2019 Fiscal Year Research-status Report
Effects of respiration on central nervous system information processing
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19K11350
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Research Institution | Aomori University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
尾崎 勇 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (90241463)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 呼吸相 / 呼吸様式 / 体性感覚情報処理 / 痛覚 / 脳波 / 活動電位 / 磁場計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,ヒトの律動的な脳活動が内在的なデフォルト・モード・ネットワークをも含めて,呼吸リズムによって何らかの影響を受けているではないかという仮説を検証するために,呼吸相や呼吸様式の違いが中枢での触覚や痛覚などの体性感覚情報処理あるいは運動機能に及ぼす影響をヒトで非侵襲的に捉えて解析するものである。そのため,呼吸相や呼吸様式の違いが感覚運動機能に及ぼす影響を脳波,筋電図,脈波,交感神経皮膚反応など電気生理学的手法を用いて捉えることを目的としている。 2019年度前半期には,呼吸相が体性感覚情報処理に及ぼす影響について,表皮内電気刺激法を用いた痛覚刺激実験を健常者で行った。従来,申請者が報告した結果とおおむね一致する結果が得られた。呼吸リズムと安静時の自発脳波との周波数解析も行い,呼吸リズムが安定していた被験者の多くにおいて安静時呼吸周波数(呼吸数が毎分15回の場合には0.25 Hz)と自発脳波にcoherence が見られることを見いだした。年度後半の国際学会と国内の研究会でこれまでの研究成果を発表した。 また呼吸相・様式と運動機能の関連について,H反射が呼吸相あるいは呼吸様式の違いによって変化するかを健常被験者で検討する予定であったが,年度後半には新型コロナウィルス感染拡大の恐れがあるため,ヒトを対象とする実験は一次的に中断して延期せざるを得ない状況に陥った。 従来からの研究継続として行ってきた,末梢神経を活動電位が伝播する様子を電位と磁場の両面から捉えることをテーマとした東京医科歯科大学,株式会社リコーとの共同研究において,手首電気刺激により腕神経叢を伝播するインパルスの可視化に成功した原著論文と手指電気刺激により正中神経手根管部を伝播するインパルスの可視化に成功した原著論文の2編を公表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度にはヒトを対象とした2種類の電気生理学的実験を行う予定であった。その1つである,脳波,脈波,交感神経皮膚反応などの計測を目的とした,呼吸相が体性感覚情報処理に及ぼす影響についての実験は遂行できて,従来,申請者が報告した呼息相では痛覚誘発反応が吸息相に比べて減弱する結果におおむね一致する結果が得られた。また呼吸リズムと安静時の自発脳波との間にcoherenceが存在することを見いだした。しかしながら,予定していたもう一つの研究テーマである,呼吸相・様式と運動機能に関するH反射の実験については,新型コロナウィルス感染拡大の影響で中断を余儀なくされた。このような状況を鑑みて,本研究課題の進捗状況は若干遅れているという自己評価に至った。ただ,従来からの研究継続で二編の原著論文が2019年度に公表されたことは社会へ知の還元が微力ながらできたと考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度が始まった現在においても,新型コロナウィルス感染拡大の影響のさなかにある。収束の時期がいまだ見えない状況ではあるものの,実験を行える状況になったら,2019年度に予定しながら実施できなかった実験を再開するとともに,これまでに収集した実験データの解析を順次進めて行きたいと考えている。こうして得られた結論を,問題点を明らかにしつつ整理し,年度後半には国内外の適当な学会で発表することを予定している。
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Causes of Carryover |
2019年度に予定していた,呼吸相・様式と運動機能に関するH反射の実験については,新型コロナウィルス感染拡大の影響で中断と延期を余儀なくされた。そのため実験に際して必要な物品等を購入をすることなく,年度末に至った。当該助成金は延期となった実験を2020年度に遂行する上で必要な物品等を購入することに充てることとしたい。また2020年度に請求した物品購入予算は5万円ともともと少ない予定であったことから,当該助成金と合わせることで,必要な物品購入で不足する心配がなくなると考えられる。
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Research Products
(11 results)