2020 Fiscal Year Research-status Report
カルシトニン遺伝子関連ペプチドを用いたサルコペニア予防法開発のための基礎的研究
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19K11379
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Research Institution | Kansai University of Welfare Sciences |
Principal Investigator |
森 禎章 関西福祉科学大学, 保健医療学部, 教授 (70268192)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山路 純子 (田代純子) 関西福祉科学大学, 健康福祉学部, 教授 (40340559)
廣島 玲子 関西福祉科学大学, 保健医療学部, 准教授 (40404777)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ミオシン重鎖タイプI / CGRP / cAMP / PKA |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の検討において、運動神経を含む末梢神経終末から放出されるとともに、骨格筋細胞に受容体が発現することが確認されているカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に着目し、骨格筋細胞へと分化させたC2C12細胞を用いて、CGRP投与時のミオシン重鎖タイプI(MyHC I)およびIL-6 mRNA発現量の変化をリアルタイム定量PCR法により観察した。培養液にCGRPを投与するとMyHC IのmRNA発現量は有意に増加するが、IL-6のmRNA発現量は殆ど変化しない事を報告してきた。本年度は、骨格筋細胞に受容体が発現していることが知られているβ2受容体活性化時のMyHC I mRNAならびにIL-6 mRNA発現量について検討を行った。培養液にβ刺激剤(イソプロテレノール)を投与すると、CGRP投与と同様にMyHC I mRNA発現量は著明に増加するが、IL-6 mRNA発現量は殆ど変化しなかった。この受容体はCGRP受容体と同様にGタンパクとしてGsと共役しているため、アデニル酸シクラーゼ活性化剤であるフォルスコリンあるいは8Br-cAMPを投与して細胞内cAMP濃度を上昇させると、MyHC I mRNA発現量の有意な増加とIL-6 mRNA発現量の有意な低下が観察された。また、アデニル酸シクラーゼ活性化剤とPKA(protein kinase A)阻害剤を同時投与すると、アデニル酸シクラーゼ活性化剤の単独投与に比べMyHC I mRNA発現量の増加が有意に抑制された。以上の結果から、C2C12細胞では細胞内でのcAMP濃度上昇によりIL-6非依存的にMyHC IのmRNA発現量が増加するが、この過程の一部にはPKA活性化を介したタンパクリン酸化過程が関与している事が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度における研究の到達目標は、C2C12細胞においてカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)やβ刺激剤投与による細胞内cAMP産生量の増加が、どのような経路を介してミオシン重鎖タイプI(MyHC I) mRNA発現量を増加させるかを検討することであった。細胞内でのcAMP産生量増加により活性化される細胞内情報伝達経路については、PKA(protein kinase A)の活性化を介する経路、cAMPが直接転写因子であるCREB(cAMP-responsive element binding protein)を活性化する経路、あるいはEPAC(exchange protein directly activated by cAMP)の活性化を介する経路が想定される。本年度はこれらすべての経路について検討を加える予定であったが、新型コロナウィルス感染症対策に伴う業務量増加により研究時間が制限されたため、PKAの活性化を介した経路を一部検討するのみに留まった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の検討において、アデニル酸シクラーゼ活性化剤に加えPKA(protein kinase A)阻害剤を同時投与すると、アデニル酸シクラーゼ活性化剤の単独投与に比べミオシン重鎖タイプI(MyHC I) mRNA発現量の増加が有意に抑制されたことから、C2C12細胞におけるMyHC I mRNA発現量増加の少なくとも一部にはcAMP-PKA系を介した細胞内情報伝達経路が関与している事が明らかになった。したがって、次年度はPKA活性化を介した経路がどのような転写因子に関与してMyHC I mRNA発現量を増加させているのかを検討するとともに、細胞内cAMP産生量の増加がその他のcAMP依存性細胞内情報伝達機構を介してMyHC I mRNA発現量を増加させているかについても検討する。具体的には、細胞内でのcAMP産生量増加により直接活性化される転写因子であるCREB(cAMP-responsive element binding protein)を活性化する経路あるいはEPAC(exchange protein directly activated by cAMP)の活性化を介する経路がMyHC I mRNA発現量の増加に関与しているか等について、活性化剤ならびに阻害剤を用いて検討を加える。
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Causes of Carryover |
本年度における研究の到達目標は、C2C12細胞における細胞内cAMP産生量の増加が、どのような経路を介してミオシン重鎖タイプI(MyHC I) mRNA発現量を増加させるかを検討することであった。しかしながら、本年度は新型コロナウィルス感染症対策に伴う業務量増加により研究時間が制限されたため、PKA(protein kinase A)の活性化を介した経路を一部検討するのみに留まった。したがって、次年度は本年度の遂行が叶わなかったPKAの活性化を介した経路がどのような転写因子に関与してMyHC I mRNA発現量を増加させているのかを検討した上で、その他のcAMP依存性細胞内情報伝達機構を介した経路についても検討を加える。
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