2020 Fiscal Year Research-status Report
Biological analyses at the molecular and cellular levels of the effects of cold stimulation using cultured nerve cells
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19K11404
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Research Institution | Kibi International University |
Principal Investigator |
井上 茂樹 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (40531447)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加納 良男 吉備国際大学, 保健福祉研究所, 教授 (70116200)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | PC12細胞 / PC12m3細胞 / 寒冷刺激 / プログラム低温恒温器 / 神経突起形成 / 神経突起形成率 / p38 MAPキナーゼ / CREB |
Outline of Annual Research Achievements |
リハビリテーションにおいて寒冷刺激は、穏やかに冷却することによって、炎症、疼痛、浮腫の抑制、痙縮の減少などの効果を得るために用いられている。スポーツ現場では、治療やコンディショニングに当てられる時間は限られるため、効果的かつ効率的な治療を実施することが求められる。寒冷刺激は、スポーツ外傷の日常的管理に貢献するうえでも、生体への効果を探究し、基礎研究の成果が求められると考えられる。 我々は培養神経細胞(PC12m3細胞)を用いて、寒冷刺激の刺激強度(温度)や刺激時間を変えることにより、寒冷刺激効果に対する最小の量(閾値)や細胞死を引き起こす量(致死量)、さらに閾値と致死量の範囲で神経突起形成が高まる量(最適値)を神経突起形成率やそのメカニズムについて検証を行ってきた。先行研究では、PC12m3細胞に寒冷刺激を与えると、未処理群と比較して5℃ 90分間の寒冷刺激を与えると約2倍の神経突起の形成がみられた。この神経突起の形成は、寒冷刺激の影響を細胞応答として細胞内シグナル伝達系であるp38 MAPキナーゼを活性化し、その応答により神経突起の形成を促進したものと推察している。 研究成果はPC12m3細胞を用いて長時間寒冷刺激の影響について細胞生存率から探求する実験を行い、PC12m3細胞に5℃の寒冷刺激を長時間与えたところ、未処理群と比べて15時間までの刺激時間では余りアポトーシスを観察しなかったが、72時間以上の刺激時間ではアポトーシスを多く観察する結果となった。長時間寒冷刺激を与えると寒冷傷害によるアポトーシスの影響が強くなり、細胞死を引き起こす致死量となることが推察された。先行研究結果からは、短時間寒冷刺激を与えると細胞死の影響が少なく、神経突起形成を促進することから、寒冷刺激には閾値、最適値、致死量があり、効果的な寒冷刺激を与えるには適用量があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度における研究実施計画は、培養神経細胞を用いてプログラム低温恒温器を使用し、寒冷刺激の安全性を細胞生存率から見出す。寒冷刺激の影響が細胞内シグナル伝達系に関連していると考え、遺伝子の活性化が神経突起形成に影響しており、ストレス応答シグナル伝達経路であるp38 MAPキナーゼやその下流にある転写因子の活性化をウエスタンブロット法により検出する研究を行った。 対象は、培養神経細胞であるPC12m3細胞とPC12細胞を用いて行った。具体的な方法は、寒冷刺激装置であるプログラム低温恒温器を用いて、刺激強度は0℃から10℃、刺激時間は0時間から168時間、刺激頻度は1回(連続)により実施した。効果判定は、神経突起形成率、細胞生存率、p38 MAPキナーゼと転写因子の検出を実施した。 研究成果は、PC12m3細胞に5℃の寒冷刺激を与えたところ、未処理群と比べて90分間群では約2倍の神経突起形成がみられ、PC12m3細胞に5℃ 60分間の寒冷刺激を与えるとp38 MAPKの有意な活性化がみられた。さらに、PC12m3細胞を用いて長時間寒冷刺激の影響について細胞生存率から探求する実験を行い、PC12m3細胞に5℃の寒冷刺激を長時間与えたところ、未処理群と比べて15時間までの刺激時間では余りアポトーシスを観察しなかったが、72時間以上の刺激時間ではアポトーシスを多く観察する結果となった。長時間寒冷刺激を与えると寒冷傷害によるアポトーシスの影響が強くなり、細胞死を引き起こす致死量となることが推察された。先行研究結果からは、短時間寒冷刺激を与えると細胞死の影響が少なく、神経突起形成を促進することから、寒冷刺激には閾値、最適値、致死量があり、効果的な寒冷刺激を与えるには適用量があると考えている。 研究計画に則って研究をすすめれており、おおむね順調に研究は進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度における研究実施計画としては、培養神経細胞における寒冷刺激効果の最小の量(閾値)や細胞死を引き起こす量(致死量)、また閾値と致死量の範囲で神経突起形成が高まる量(最適値)の検討の補充・検証、および寒冷刺激における細胞内メカニズムの検証の終了を目指す。PC12m3細胞は、寒冷刺激による神経突起形成の誘導にはp38 MAPキナーゼ経路の活性化が必要であることが推察されている。一方、細胞がわずか1℃の温度変化 を認識する方法を調査する必要があるため、p38 MAPキナーゼ経路の詳細な分析を実施する。 p38 MAPキナーゼの活性化の検出実験は、PC12m3細胞に寒冷刺激を与えた場合、p38 MAPキナーゼが有意に活性化する結果が得られている。PC12m3細胞を用いて3℃で5分間、4℃で30分間、5℃で120分間の寒冷刺激を与えた場合、p38 MAPキナーゼのリン酸化の程度は最も亢進する結果が得られている。さらに、寒冷刺激によるp38 MAPキナーゼの活性化の程度は、寒冷刺激による神経突起形成の誘導のピーク値と一致する結果も得られている。 我々は、PC12m3細胞を用いて高浸透圧およびマイクロ波照射などの刺激によってCREBの活性化を検出している。 CREBは、細胞増殖や分化、生存を含む多用な 細胞応答、細胞外刺激に対する細胞応答を媒介するさまざまなシグナル伝達経路の標的となる転写因子であり、PC12m3細胞を用いた寒冷刺激による CREBの活性化の詳細な分析の補充・検証をすすめる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、ストレス応答シグナル伝達経路である転写因子の活性化をウエスタンブロット法により検出して結果を取り纏める予定であったが、解析する機器の不具合で多くの時間を割いてしまった。また、英語論文についての校正費は年度末までに投稿準備が完了しなかったため、計上しなかった。 次年度使用額の使用計画は、結果を解析するための高性能の機器ならびに現在準備中の英語論文の英文校正費に支出予定である。
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Research Products
(4 results)