2021 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病および加齢による線維化が関節構成体に及ぼす影響
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19K11413
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
松崎 太郎 金沢大学, 保健学系, 助教 (10401910)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ラット / 高血糖 / 関節不動 / 滑膜 / 軟骨 |
Outline of Annual Research Achievements |
高血糖が関節構成体に及ぼす影響を観察するためstreptozotocinを用いて高血糖ラットを作成した。 6週齢のWistar系雄性ラット12匹にstreptozotocin(100mg/kg)を腹腔内投与した。2週後に血糖値が300mg/dl以上となったものを実験に用いた。9週齢で通常飼育群(n=6)と創外固定による関節不動群(n=6)を作成し、対照としてstreptozotocinを投与しないラットを通常飼育群(n=6)と関節不動群(n=6)を作成して13週齢まで飼育し、安楽死させて後肢を標本として採取した。 1.体重と血糖値:実験終了時の体重は高血糖群では189.2±25.9g、不動群では終了時179.3±3.6gであり、対照群では336.7±19.3gであった。対照群と高血糖群、対照群と高血糖不動群において有意差を認めたが高血糖群と不動群では有意差は認めなかった。対照群の血糖値は平均153.3mg/dlに対し、高血糖群および高血糖不動群では全例で600mg/dlを超えていた。 2.病理組織学的検討:対照群と比較して関節滑膜においては高血糖群/不動群ともに明らかな相違は認められなかった。膝蓋下脂肪体では高血糖群では脂肪細胞の萎縮が観察され、不動群では脂肪細胞の消失が観察された。後方関節包に関して高血糖群では密生化の傾向を示し、不動群では密生化している像が観察された。また高血糖群の関節軟骨は滑らかで対照群と差は見られなかったが、対照群/関節不動のものが関節腔内への肉芽様組織の侵入および軟骨表層への増生が観察されたが高血糖/不動群ではそのような組織の新生は観察されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
加齢により関節が「堅くなる」ことは経験上知られているが、関節構成体のどこがどのように「堅く」なるのかを病理組織学的に観察したものは報告されておらず、加齢により関節構成体がどのような変化を生じるのかを明らかにする目的で実験を行った。 加齢ラットを用いた実験では引き続き組織の病理組織学的変化について解析を行い、軟部組織における線維化について解明を進めている。また2021年度はもう一つのテーマでもある高血糖が関節構成体に及ぼす影響を調査するための実験を行い、標本を作製した。 現在、加齢ラットに運動負荷を与えることが関節構成体の組織のどのような影響を与えるのかを調査するための実験を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
加齢による関節構成体の変化と従来の研究で行って来た不動による関節構成体の変化は線維化として類似する部分があり、慢性炎症という概念で説明できる可能性が考えられる。また高血糖は関節軟骨には影響を及ぼさない可能性が示唆されるが、軟部組織においては密生化が早期から生じる可能性があり、詳細に検討する必要がある。
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Causes of Carryover |
当初に参加を予定していた学会等の旅費を計上していたが、COVID-19の蔓延により中止またはWebによる遠隔開催となり旅費が大幅に減少したため実験の遂行に必要な抗体等の薬品および器具などを前倒しで購入したが次年度使用額が生じた。残高および令和4年度に請求する助成金については令和4年度の実験および論文作成・投稿などの経費に充てる予定である。
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