2022 Fiscal Year Research-status Report
血栓形成関連因子の変動からみた運動強度閾値の季節・日内変動
Project/Area Number |
19K11444
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
石指 宏通 奈良県立医科大学, 医学部, 教育教授 (50260807)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 運動 / 季節変動 / 日内変動 / VWF / ADAMTS13 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は若年成人(男子大学生)8名を対象に、夏季(8月)の7時30分(AM)と18時(PM)に55%HRmax下のランニング運動を負荷し、その前後の血栓形成関連因子(VWFとADAMTS13)を測定することで、夏季の日内変動を明らかにした。また、冬季の日内変動(3名追加)と比較することにより、夏季・冬季の季節の違いが血栓形成関連因子の変動に及ぼす影響について検討した。 その結果、夏季の55%HRmax下のランニング運動においては運動前後の血栓形成関連因子の日内変動は認められなかったものの、冬季同様に運動前のVWF活性はAMでPMに比して高く(AM vs PM : 100.6% vs 94.1%)、血栓傾向の指標となるVWFとADAMTS13比(VWF/ADAMTS13)は運動前後ともAMで高い値を示した。 次に季節変動についてみると夏季・冬季とも運動前後の血栓形成関連因子の変動にはAM・PMとも統計有意差は認められなかったものの、VWF活性は冬季で高くなる傾向がみられ、特にその傾向はAMで顕著であった(《運動前》冬季vs夏季:121.1%vs100.6%)(《運動後》冬季vs夏季:125.6%vs103.5%)。VWF/ADAMTS13についても冬季のAMで高い値を示した。 これらのことは健常な若年成人においては血栓傾向に変化を及ぼすとされている運動強度閾値よりも低い今回の強度(55%HRmax下)の運動では、時間帯(日内)・環境温度(季節)の違いによる影響を受けないこと示す結果であった。しかしながら、冬季では運動前からVWF/ADAMTS13が高く血栓ができやすい状態にあるため、冬季、とくにAMの運動には十分な注意を払う必要性のあることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初は夏季(7・8月)の日内変動(AM7:30とPM6:00)を明らかにし、昨年度の冬季結果と比較し、季節変動について検討する予定で計画していたが、2022年度も夏季にもCOVID-19感染者拡大時期と重なり、大学から感染防止対策としてスポーツ活動の自粛要請が出されたこともあり、被験者の安全面を考慮して、夏季実験の一部を延期することとなった。また、若年者で得られた日内・季節変動の結果が加齢によって、どのように変化するかについて、運動習慣のある中高年者を対象に検討する計画についても延期することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に延期となった夏季実験の一部の実験について、本学のCOVID-19対策本部会議ならびに倫理委員会と協議しながら、十分な安全対策 を図り、被験者の同意を得たうえで、継続して実験を行う予定である。また、血栓傾向が若年者より高いと予想される中高年者を対象として、加齢が血栓形成関連因子の日内変動・季節変動に及ぼす影響について検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度に延期となった夏季実験の一部が実施できなかったため、2023年度に実施予定である。また、若年成人の冬季・夏季の比較から得られた結果をもとに運動習慣のある中高年者を対象として加齢の影響についても検討する予定である。
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