2020 Fiscal Year Research-status Report
伸張性運動に伴って生ずる筋損傷に対する非侵襲的なバイオマーカーの妥当性
Project/Area Number |
19K11452
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
岡田 純一 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (10277791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 克彦 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (80344597)
山口 翔大 慶應義塾大学, システムデザイン・マネジメント研究科(日吉), 研究員 (80896093)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | タイチンNフラグメント / 遅発性筋損傷 / 運動誘発性筋損傷 / 筋収縮様式 / 妥当性検証 |
Outline of Annual Research Achievements |
高強度伸張性運動は運動誘発性筋損傷(Exercise-induced muscle damage: EIMD)を誘発する。多くの先行研究ではEIMDの発現を評価するために、客観性に優れるバイオマーカーを使用してきた。近年、骨格筋を構成する蛋白質であるタイチンのN-末端フラグメントが、EIMDに伴い尿中に遊離し、クレアチンキナーゼ(CK)と同様の濃度変化を示すことが報告されたことにより、尿試料をEIMDのバイオマーカーとして使用できる可能性が示唆された。本研究では、EIMDの評価用バイオマーカーとして尿中タイチンN末端フラグメント(UTF)を使用することの妥当性を担保するために、自転車ペダリング運動およびフルマラソン後のUTFの動態変化に着目して実験を行った。 自転車ペダリング運動は短縮性筋活動から主に構成される有酸素運動であるため、高強度であっても理論上はUTFが尿中から検出されることはない。その一方で、マラソンにおいては伸張性筋活動を含む有酸素運動であるため、ペダリング運動とは異なり、運動後にUTFが上昇することが予想される。本年度は、2019年に行われた富士山マラソンの参加者12名の尿サンプルをもとに、高強度有酸素運動後のUTFの動態を調査した。その結果、UTFは運動直後に最も高い値を示し、運動翌日にはpre値(運動前)にまで低下していた。この結果は我々が前年度に明らかにした、無酸素性の伸張性運動後の経時変化とは異なる動態であった(無酸素性運動後には96時間で最大値を示していた)。 なお、自転車ペダリング運動によるUTF変化の検証を行うための実験は、2020年度にすでに完遂し、一部のサンプルの分析が終わっていることから、2021年度では全サンプルの分析を完了し、成果報告の準備を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、UTFのバイオマーカーとしての妥当性を保証する知見を確実なものにするために、Ⅰ:性別、年齢、運動経験が異なる者を対象にUTFの変化を検証すること、およびEIMDが発症しないとされている短縮性収縮運動からなる自転車ペダリング運動後と、EIMDが発症するマラソン後のUTFの変化を比較することを検討している。 その上でⅠの年齢による影響の検証を2020年度において実施する計画であったが、コロナ禍の影響により高齢者を対象とした研究の遂行が難しかったことから、若年者が対象となるⅡの自転車ペダリング運動による実験、および2019年度に採取していたフルマラソン後のUTFの分析を優先的に行った。 有酸素運動がUTFへ与える影響について、2019年に行われた富士山マラソンの参加者12名を対象に、フルマラソン後のUTFの動態の検証を実施した。その結果、UTFは運動直後に最も高い値を示し、運動翌日にはpre値(運動前)にまで低下していた。この結果は、我々が前年度に明らかにした、無酸素性の伸張性運動後の経時変化とは異なる動態であった。加えて、自転車ペダリング運動後のUTF変化においては、6名という少ない数ではあるものの、フルマラソン後と明らかに動態が異なることを確認している。この差異に関する原因を明確にするために、残りのサンプルの分析を早急に進め、場合によっては例数の追加も課題として考えられる。 UTFと年齢の関係に関する検証は、コロナ禍の収束を見て再開を目指すところである。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度前半は、2020年度に得られた有酸素性運動後のUTFの分析を進める。有酸素運動後のCKは、短縮性運動で構成されているにもかかわらず上昇する。この原因には、有酸素運動によって産生されたCKが、筋細胞膜の透過性亢進によって血中に逸脱することが原因とされているが、タイチンにおいては、そもそもEIMDが生じない限りは断片化することもないため、UTFが検出されないことが予想される。この仮説に基づきCKとUTFの発現動態に相違があることを確認することができれば、UTFがEIMDに対して特異的なバイオマーカーと確認できる。2020年度に行った実験によって、これら仮説を検証する準備は整っているため、2021年度の前半には全サンプルの分析を終え、後半には本結果の成果報告を中心に進める予定である。
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Causes of Carryover |
年齢による影響の検証を2020年度において実施する計画であったが、コロナ禍の影響により高齢者を対象とした研究の遂行が難しかったことから、若年者が対象となるⅡの自転車ペダリング運動による実験、および2019年度に採取していたフルマラソン後のUTFの分析を優先的に行った。このような研究計画の修正にともない次年度使用額が生じた。
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