2020 Fiscal Year Research-status Report
女性アスリート特有の健康問題の予防のための自己管理支援システムの構築
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19K11454
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Research Institution | Gifu Shotoku Gakuen University |
Principal Investigator |
煙山 千尋 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 准教授 (10615553)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尼崎 光洋 愛知大学, 地域政策学部, 准教授 (70613967)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 女性アスリート / female athlete triad / 予測モデル / 自己管理 / 指導者 / 食行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
スポーツ界において、女性の国際競技力が向上する一方で、女性アスリートの三主徴(Female Athlete Triad:FAT)が問題視されている。FATとは、女性アスリートなら誰でも陥る危険性のある3つの症状(利用可能エネルギー不足、運動性無月経、骨粗鬆症)がそれぞれ関連して発症する健康問題である。 特に、女性アスリートは男性アスリートと比較して、指導者に対する依存性が高く、問題の解決を指導者頼りにする傾向が強いという。また、FATとの関連が深い摂食障害に関連する要因として、コーチらの存在があると考えられている。そのため、女性アスリートが、自身の心身の健康問題を自分の問題と捉え、自ら積極的に対処し改善のために働きかけるなど、主体的に自己管理をすることを促す支援が必要である。 これらの問題意識から、本研究では、女性アスリート特有の心身の健康問題に対する主体的な働きかけを促進させるために、有効な支援方法を開発することを目的とし、研究を進めてきた。 今年度は、国内の女性アスリートを対象に、FATの発症と低用量経口避妊薬の現状を中心とした基礎調査と、指導者に対する依存性が食行動の傾向に与える影響について検討を行った。その結果、FATに対する認識が低い状況や、低用量経口避妊薬がコンディショニングの一助として一定数のアスリートに利用されている状況が推察された。さらに、女性アスリートの食行動異常には、指導者への依存性が関与している可能性が示唆された。具体的には、指導者に対して絶対的な信頼感や安心感を持つと不適切で極端な食事制限を受け入れる可能性が高く、指導者からの理解や共感を求める傾向が高いと食事の後に落ち込んだりむちゃ食いをするリスクが高くなることが示された。現在は、アスリート自身の心身の健康問題に対する統制感を高め、予防的健康行動を促進するための要因について検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新規の調査協力者に対する質問紙調査の調査用紙が完成し、調査のためのスケジュールを調整していたところで新型コロナウイルス感染症が拡大し、調査の見送りを余儀なくされた。さらに、新型コロナウイルス感染症の収束の見込みがたっていないことから、延期された調査の実施時期についても不明確である。そのため、研究の進捗は当初の予定より遅れている。 しかし、昨年度は、質問紙調査の内容をweb調査で補うことで、データ収集の後れを取り戻すように努めた。そして、今年度も調査対象地域において、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発出されている現状を踏まえ、web調査を中心に実施する予定であり、質問紙で調査する予定であった内容についてもweb調査に盛り込むことで対応することを検討している。また、今後、新型コロナウイルス感染症の収束状況によっては、予定されていた質問紙調査を実施することも想定している。 これまでの研究成果については、論文や学術学会での発表を随時行っており、今後は、国際スポーツ心理学会(発表申請中)をはじめ、日本スポーツ心理学会、九州スポーツ心理学会にて成果報告を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3(2021)年度は、これまでに収集したデータの追加的分析と成果公表と並行し、新たに調査を行い、分析・検証と成果の公表を行う。 新規調査では、女性アスリート特有の心身の健康問題に対するアスリート自身の主体的な働きかけを促進させる要因を探り、健康行動理論を用いた関連性の検討を行う。新規調査協力者に対するweb調査を速やかに行い、令和4(2022)年度に予定している研究に繋げたい。また、質問紙調査についても可能な範囲で行いたい。 研究成果は、論文及び学会発表により公表する。すでに、2021年9月30日~10月4日に対面とオンラインの併用にて開催される国際スポーツ心理学会に2件の発表を申請中である。その後も、国内で開催予定の日本スポーツ心理学会や九州スポーツ心理学会等での研究発表を行う予定である。併せて、学術雑誌や大学紀要(スポーツ心理学研究、ストレス科学研究、岐阜聖徳学園大学紀要等)への論文投稿も行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用分が生じた理由は、前年度までの繰越金額が大きかったことである。この理由としては、①研究の遅れにより2019年度と2020年度に購入を予定していた設備備品や消耗品の購入が2021年度以降にずれ込んだこと、②2019年度の研究分担者の海外研修により、分担金の資金運用開始時期が後ろ倒しとなったと、③新型コロナウイルス感染症の影響により出張旅費を執行しなかったこと、が大きい。 次年度使用が生じた分は、当初より購入を予定していた物品の購入に使用したい。また、感染症により研究会の開催が困難になるため、web会議を行うための環境を整えるために使用したい。さらに、web調査においては、質問紙調査の内容を盛り込んだことによる項目数超過の追加料金に充てたい。
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