2019 Fiscal Year Research-status Report
習慣的な運動による認知機能の改善に脳血管の拡張反応性は寄与するか?
Project/Area Number |
19K11467
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Research Institution | Hokusho University |
Principal Investigator |
井出 幸二郎 北翔大学, 生涯スポーツ学部, 教授 (00526783)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 正明 東海大学, 国際文化学部, 教授 (70208544)
沖田 孝一 北翔大学, 生涯スポーツ学部, 教授 (80382539)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 低酸素 / 前頭極 / 近赤外線分光装置 / ヘモグロビン容積 / 心拍変動 / 認知機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、低酸素負荷に対する近赤外線分光装置を用いたヘモグロビン容積の変化が、体力とどのような関係があり、さらに、認知機能との関連性について明らかにすることを目的とした。近赤外線分光装置を用いて左右前頭極の低酸素負荷に対するヘモグロビンの変化を測定した。同時に心電図を記録し、心拍変動を評価した。さらに、身体組成、全身持久力、認知機能の評価も行った。 30歳以下の若年男性においては、低酸素に対するヘモグロビン容積変化は左右で異なり、非対称性であることが明らかとなった。低酸素に対するヘモグロビン容積変化は全身持久力、認知機能との相関関係は認められなかった。一方、この低酸素に対するヘモグロビン容積変化における左右脳の非対称性は、心拍数やそれを調整する自律神経の働きと関係することが明らかとなった。60歳以上の高齢者においては、若年者に見られた低酸素に対するヘモグロビン容積変化における左右脳の非対称性は明確ではなかったが、低酸素に対するヘモグロビン容積変化は心拍数の変化と相関し、認知機能とも相関することが明らかとなった。本研究では全身持久力を体力の指標として用いたが、低酸素に対するヘモグロビン容積変化との相関関係は認められなかった。しかし、低酸素に対するヘモグロビン容積変化と筋肉の量との間に相関関係が認められた。これらの結果から、低酸素に対するヘモグロビン容積変化は心拍を調整する脳神経活動を反映し、とりわけ自律神経と関連することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の研究計画では、低酸素負荷に対する前額部ヘモグロビン容積の変化と認知機能、そして、体力との関連性を明らかにすることが目的であった。結果は、仮説を支持するものではなかったものの、次の研究課題を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
習慣的な歩行やジョギングのような日常の身体活動の結果が、全身持久力に反映されると考えられ、全身持久力の指標として換気性閾値を用いた。本研究では、全身持久力と低酸素負荷に対する前額部のヘモグロビン容積変化との相関の有無を検証したが、相関関係は認められなかった。換気閾値は全身持久力の指標としては、センシティビティが低い可能性もあり、全身持久力の指標として広く用いられている最大酸素摂取量の測定を行う。一方、低酸素負荷に対する前額部のヘモグロビン容積変化は筋肉の量と相関する結果が得られ、全身持久力だけではなく筋力も評価項目として取り入れる必要がある。 本研究では、低酸素負荷に対する前額部のヘモグロビン容積変化を「血管の拡張反応性」としてとらえてきたが、低酸素負荷に対する脳神経活動の変化を一部反映している可能性が示唆され、低酸素負荷に対する前額部のヘモグロビン容積変化を「血管」の指標としてだけでなく、「神経活動」としてとらえ、研究を進める。
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Causes of Carryover |
本研究で用いているガス流量調整は、本研究代表者が手動でおこなっており、大学院生が実施するのは難しい。この方法を自動化することにより、大学院生レベルの誰でも測定ができることを目指し、初年度に自動のガス流量調整器を作成することで、企業との機器の作成の打ち合わせをしていた。しかし、科研費が申請額よりも減額されていたことから、機器の作成にまでに至っていない。高度な”自動化”ではなく、予算範囲内で大学院生レベルでも測定ができる機器の作成を計画している。
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Research Products
(1 results)