2019 Fiscal Year Research-status Report
アスリートの慢性痛に伴う過剰注意の脳活動解明と競技早期復帰を目指した評価指標構築
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19K11479
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
山代 幸哉 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 准教授 (20570782)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 大輔 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 教授 (60544393)
大森 豪 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 教授 (70283009)
山崎 史恵 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 教授 (80410273)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アスリート / 慢性痛 / 脳波 / 注意 / PVAQ |
Outline of Annual Research Achievements |
アスリートには受傷部位は治癒しているにも関わらず,痛みが解消せず長期的にトレーニングからの離脱を余儀なくされる場合がある.我々は,この原因の一つは「怪我により過剰になった注意機能によって引き起こされる」と推察している.Poghosyanら(2008年)が,Neuron誌に脳磁図を用いて大脳の視覚野・聴覚野の神経活動が「注意」により増大することを報告した.「カクテルパーティ効果」に代表されるように自身の周りが騒がしい時にヒトは,自身の目的とする物や場所に注意を向けると騒音は無視したかのように消え,言葉がわかるようになる.これは,注意を向けると注意を向けた物や場所を処理している神経活動が増大するために起こると考えられている.すなわち,「注意」は各感覚領域においてヒトが円滑な日常を送るために必須のメカニズムである. しかし、体性感覚領域では痛みという感覚とそれ以外の感覚を分別する必要があるため、注意によって安全な情報を抑制し,危険を伴う情報のみを増強していると考えられる.これらのことから,怪我の治癒後にも続く慢性的な痛みは,本来痛みを感じないような軽度な刺激に対しても過剰に注意が向いてしまう注意機能の破綻によって起こっているのではないかと考えた.この問いを解決するために,①注意の影響は刺激の危険性によって変わるか?②過剰になった注意機能を見極める指標は作成可能か?という視点から様々な体性感覚刺激を用いて脳波を計測する.現在、北信越地区に在籍する陸上競技部員を対象に「痛みへの選択的注意」を測定するPVAQという質問紙調査を用いてアスリートの痛みへの注意を行い、痛みに対する注意が向きやすい選手とそうでない選手のスクリーニングを実施している。同時に痛みに対する注意と競技力との関係性についても検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
われわれはアスリートの過剰になった痛みに対する注意機能を評価するためにPVAQという質問紙による調査を追加した。現在、脳波実験の前段階としてPVAQに関する分析を行っている。その結果、アスリートでは過去に報告されている一般大学生のPVAQの値や諸外国での慢性疼痛患者の質問紙で得られた結果よりも高値になることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
われわれは,「アスリートに生じる慢性的な痛みは,怪我により過剰になった注意機能により引き起こされる」という仮説を立て,本仮説の検証を目指している。 具体的には,脳波を用いて1)機械・電気・熱痛覚刺激認知への注意の役割を明らかにし,注意による電位変化が,2)過剰な注意機能を見極める評価指標になることを実証する.得られた結果を基に医師,スポーツカウンセラーと協力し,アスリートの怪我を未然に防ぐのはもちろんのこと,怪我をしてしまった際にも怪我の影響による長期的な離脱を防ぎ,多くのアスリートのパフォーマンス向上につなげることを研究の目的とている。従って、今後の実験では脳波を用いて注意時の体性感覚誘発電位を計測する。
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Causes of Carryover |
国際学会への旅費を計上していたが、今年度は国際学会へ参加しなかった。次年度以降に学会(国際、国内)および国際誌への成果発表を目指す。
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