2021 Fiscal Year Research-status Report
戦前の女性の生き方イメージの形成過程におけるスポーツの役割
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19K11481
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Research Institution | Tokai Gakuen University |
Principal Investigator |
木村 華織 東海学園大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (50634581)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
來田 享子 中京大学, スポーツ科学部, 教授 (40350946)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 女性アスリート / ジェンダー / 良妻賢母 / ライフヒストリー / 歴史 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に続き、新型コロナウイルス感染症の影響により研究活動が遅延している。これまでも研究計画(遂行順)を変更しながら進めてきたが、研究期間3年目となる令和3年度も予定していた史料収集等が困難となったため、計画していた順番を入れ替えて遂行可能な研究課題から実施した。令和3年度は6つの研究課題のうち、課題4:女性アスリートのライフヒストリーの描出、課題5:女性アスリートのライフヒストリーの検証と女性の生き方イメージとの対比を中心に検討し、課題2:本研究が対象とする時期の「良妻賢母像」と女性の生き方イメージの検証、課題3:新聞・雑誌にみる女性アスリートの描かれ方の検証については、可能な範囲での史料収集および検討を行った。 課題4については、課題1の結果および史料収集状況を勘案し、現時点で描出可能なアスリート(前畑秀子、小島一枝、松澤初穂、梅村すみ子)について、昨年度から継続的に描出を進めている。このうち前畑秀子については、課題5の検討課題の1つである「人生全体を描いたライフヒストリーの検証」に着手した。 水泳の小島一枝については、これまで収集していた一次史料の他に、令和3年度は選手時代のメダル、選手引退後に役員として活動していたことを示すものなど、選手時代からその後も含む史料等の存在を確認することができた。これらの史料は、本人のライフヒストリー以外にも、女子水泳黎明期に存在していた日本女子水上競技連盟の活動状況などを知る史料としてもその価値は大きい。 課題2と課題3については、未だ十分な史料調査および収集ができているとはいえないが、従来の先行研究やデータベース等、現時点で収集済みの史料を用いてジェンダー視点からの検討を行い、本成果を用いた報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響により、昨年度(令和2年度)からは研究計画にある遂行順を入替ながら研究活動を行ってきた。しかし、令和3年度も県外への出張が憚れていたことや学内業務の多忙により、これまでの遅れを取り戻すには至らなかった。現時点での進捗状況は以下の通りである。 課題1:大正後期から昭和戦前期に活躍した女性アスリートの基礎的情報の収集・整理については概ね終了している。課題2:本研究が対象とする時期の「良妻賢母像」と女性の生き方イメージの検証および課題3:新聞・雑誌に見る女性アスリートの描かれ方の検証については、資料収集・発掘に出掛けることができないため十分な検証ができているとは言えず、昨年度から引き続き遅れている課題である。課題4:女性アスリートのライフヒストリーの描出は、これまでに収集した自伝・手記・学校誌などの検討は進んでいるものの、対象選手を知る人物や家族等へのインタビューは実施できていないため、前畑秀子を除いては十分な描出はできていない。一方で、小島一枝に関する新たな史料が確認された点は、今年度の大きな成果である。 本研究課題において、史料発掘とインタビュー調査ができなくなることは、研究遂行に大きな影響を与えるものであった。未だ大正後期から昭和戦前期にみる女性の生き方イメージに関する検証を終えられていないことから、令和4年度は課題2と課題3に関する史料収集と検討を早急に進めたい。また、これまで実施できなかったインタビュー調査についても、インタビューイと連絡を取りながら実現に向けて準備する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では「スポーツはジェンダー規範を乗り越えるツールになり得たのか」という問いを立て、より広範に女性アスリートの人物史の中でスポーツが果たした役割を明らかにすることを目的としている。この目的達成のために3段階の検証プロセスを設定した。1)戦前の女性アスリートがたどった人生全体をライフストーリーとして描き出す、2)描き出した女性アスリートの人生経路や生き方と大正後期から昭和戦前期にみる女性の生き方イメージの検証、3)スポーツが女性たちの人生に果たした役割の検証、である。しかし、現時点では1)の一部が終わっているに過ぎないことから、ペースをあげて取り組む必要がある。 そのために令和4年度は、第一に、大幅な遅れが生じている課題2と課題3について史料収集および検討を行う。これにより、上記の検証プロセス2)が可能となる。新型コロナウイルスの感染状況をみながら、可及的早急に取り組むこととする。さらに課題4で実施できていないインタビュー調査を実現する。対象が高齢であるため対面での実施が難しいようであれば、電話でのインタビュー調査を用いて実施回数を増やすことで対応する。これら課題2・3・4を進めることで、研究期間の最終年度に予定している課題5と課題6が可能となり、検証プロセス3)に取りかかることができると考える。 当初の研究計画よりもかなり計画が遅れているため、ペースをあげて研究を進めるとともに、検討対象とする人物を限定することなども視野に入れて研究を進める。
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Causes of Carryover |
令和3年度の研究計画では、令和2年度の計画において実施できなかった史料収集、聞き取り調査を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症が終息をみなかったこともあり、繰り越しになっていた調査が実施できなかった。また、学会大会についても令和3年度はすべてオンライン開催に変更されたことから、予定していた旅費を執行できない状況が生じた。その他、未使用となった謝金(資料整理・デジタル化アルバイト謝金)については、史料調査と連動して計上している経費であるため執行していない。分担者の未使用額についても代表者と同様の理由である。 以上のことから、令和3年度に執行できなかった予算については、令和4年度に繰り越し、研究課題を遂行する予定である。
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