2021 Fiscal Year Research-status Report
アスリートの優れた視覚情報処理機能を支える神経基盤の解明
Project/Area Number |
19K11482
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
上林 清孝 同志社大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (70415363)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 視覚情報処理 / MRI / tDCS / MOT課題 |
Outline of Annual Research Achievements |
オープンスキル系スポーツにおける優れた運動パフォーマンスには素早い正確な状況判断が不可欠で、視覚から得られた情報を知覚・認知し、状況に応じた運動指令を瞬時に筋へ伝えることが求められる。この研究では、球技スポーツのシーンに類似した動的な視覚情報処理課題である3次元複数対象追跡(multiple object tracking: MOT)課題からアスリートの視覚情報処理能力を評価するとともに、情報処理能力に優れたアスリートでは安静時の脳領域間の機能結合や灰白質量に特徴がみられるのか磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging: MRI)を用いて調べ、視覚情報処理の能力差をもたらす神経基盤を明らかにすることを目的としている。さらに、経頭蓋直流刺激(transcranial direct current stimulation: tDCS)によって大脳皮質の興奮性を修飾することで課題成績に変化が生じるか調べる計画としている。 これまでの研究からMRIの3次元T1強調画像におけるvoxel-based morphometry(VBM)解析により、低次の視覚関連領域の灰白質容積とMOTの課題成績に有意な正の相関が認められた。そのため、その大脳皮質領域に対し、tDCSによる20分間の陽極刺激または陰極刺激を与え、刺激前後のMOT課題成績を比較した。その結果、陰極刺激の場合では追跡対象物の移動速度が速い条件で課題成績の向上がみられた。一方、陽極刺激や疑似刺激の条件では課題成績の変化はみられなかった。これらの結果から、大脳皮質に対する非侵襲的な刺激によって低次視覚野の興奮性を下げることにより、即時的に視覚情報処理能力を高められる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MOT課題成績と関連する大脳皮質領域に対して、非侵襲的な脳刺激を与えることで課題成績に対する効果を検討することができ、進捗はおおむね順調と思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
経頭蓋直流刺激の陰極刺激によって課題成績に変化がみられたが、電極の配置方法をさらに検討する必要がある。また、MRIにて脳領域間の機能結合の強さが課題成績に関連するのかを調べる予定としている。その他、反応時間課題にて視覚-運動協調機能と脳構造に関する研究に関しても検討する。
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Causes of Carryover |
当該年度の国際学会での発表ができず、旅費等で次年度使用額が生じた。学会発表や論文掲載の経費として使用予定である。
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Research Products
(1 results)