2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K11503
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田口 素子 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (90360734)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本 国子 聖徳大学, 人間栄養学部, 助教 (60413209)
鳥居 俊 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (70164069)
高井 恵理 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 助教 (90802455)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 朝食摂取 / 競技者 / からだ作り |
Outline of Annual Research Achievements |
競技者が良好なコンディションを維持しながらからだ作りを行うことは競技力向上にとって極めて重要である。そこで本研究では13C呼吸試験法を用いてたんぱく代謝の観点から競技者の朝食摂取の有用性について明らかにすることを目的としている。 2019年度は、炭酸ガス炭素同位体比分析装置 POC one(大塚製薬㈱製)を用いて本研究を推進するにあたり、測定プロトコールについて検討を重ねた。その結果、研究デザインを変更する必要があることが明らかになった。朝食を欠食している者を被験者としてリクルートし、朝食欠食時をコントロール試行として最初に実施する。その後、400-600kcal程度の朝食を1週間程度継続して毎日摂取させたのち、早朝空腹時に安定同位体投与後に180分呼気を採取して分析する。各試行時に食事調査、運動時及び安静時のエネルギー消費量測定、尿検査及び血液検査を実施する。以上のようなデザインで今後の測定を行うこととした。その際、エナジー・アベイラビリティー(energy availability: EA)を用いて被験者間のエネルギー状況をそろえて比較検討を行うことは予定通りであり、EAで調整した食事摂取の実施方法について継続検討中である。EAとは、1日の総エネルギー摂取量からトレーニングによるエネルギー消費量を差し引いて除脂肪量(FFM)で除した値であり、基礎代謝や生体維持の諸機能のために利用しうるエネルギー量を指しており、算出の方法論は確立できている。 以上のプロトコールを用いて本実験の被験者募集をし、2-3月から測定を実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大防止のために外出自粛となり、キャンパス内の教室や測定施設の使用に影響が出たことから被験者募集と本実験の実施ができなかった。緊急事態宣言解除とその後の状況を見ながら、今後の測定を実施していきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で用いる13C呼気試験は、炭酸ガス炭素同位体比分析装置POC one(大塚製薬㈱製)で炭素の安定同位体である13Cを標識した化合物を経口投与後、呼気中に排出される13CO2/12CO2の変化量を経時的に測定することによって、その化合物の消化・吸収や代謝状態を非侵襲的に診断できる方法として臨床の現場で用いられている方法である。しかし、この方法を用いたスポーツ栄養学的研究はこれまでにないため、詳細な測定プロトコールを確立する必要があった。 そこでまず、朝食摂取習慣のある男子大学生競技者を対象としてロイシンの安定同位体を用いて予備実験を実施した。起床後に来室させ、通常通りの朝食を摂取させた後(BE-1d試行)と摂取しない場合(BS-1d試行)の2条件で測定を行い、ベースライン値からの変化量を90分間測定した。試行間で差が観察されたように思えたが、90分ではベースライン値近くまで戻らず、より長時間の観察が必要であることが分かった。次に、EAを用いて前日の食事を調整した測定を試みた。朝・昼・夕の3食の食事を摂取させた場合(EA45試行)と、前日の朝食を欠食させた場合(昼食及び夕食は同じ食事, EA30試行)において、早朝空腹状態で180分間の測定を実施したところ、試行間での変化量の差は大きくは見られなかった。そのため、測定条件を変更して1週間食事調整をした後に測定することとした。朝食を欠食する習慣がない者に欠食を継続させることは困難であり、かつ好ましくないことから、被験者の選定条件も欠食習慣のある者へと変更した。朝食欠食習慣のある男子大学生を対象として通常通り欠食している場合(BS試行)と、1日400kcalの被験朝食(エネルギー飲料)を1週間摂取させた後(BE-1wk試行)に早朝空腹状態で測定を実施したところ、BS試行において変化量が大きいことが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
たんぱく質の摂取に関して考察する場合、エネルギー摂取条件を揃えておく必要がある。そこで本研究ではエネルギー状態の指標としてEAを用いることとした。食事を自由摂取にさせた場合、朝食欠食習慣のない者はその後の食事でエネルギーの不足分を無意識のうちに摂取して空腹を補うことから、欠食試行でもEAを低く保つことはかなり難しいことも予備実験で明らかになっている。実際の競技者の日常生活の中でEA調整を行う場合、運動量を詳細に把握する必要があり、それに応じて食事量も増減させなくてはならない。また、競技者に測定期間中のトレーニング量と食事量を調整させることは現実的に困難であり、種目特性を絞る中で朝食欠食習慣のある競技者をリクルートすることもかなり難しいと考えられる。そこで、朝食を欠食する習慣のある健康な男子大学生を被験者とし、欠食試行をコントロールとして朝食摂取試行と比較するというデザインで本実験を行う予定である。EAを調整するために運動介入によるEAの調整についても予備実験を行い検討中である。また本実験では、たんぱく代謝だけでなく、安静時代謝量の測定も行い、早朝空腹時の呼気の呼吸商から基質利用状態も併せて確認をしていくほか、体タンパク分解の指標となる尿中や血中のパラメータも検査する予定にしている。 2020年2月以降に被験者募集を行い本実験としての測定を開始する予定であったが、新型コロナウイルス感染予防と外出自粛のため大学キャンパス内の教室使用や測定室の使用に影響が出たため、被験者募集にも至らなかった。本研究はそれぞれの測定を少人数で実施することが可能であり、一回に被験者を1名ずつ測定することが可能である。一人の被験者に対してウォッシュアウト期間を挟み2試行実施することにし、緊急事態宣言解除後に測定を再開したいと考えている。
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Causes of Carryover |
今年度は予備実験によるプロトコールの確定を中心に研究を行ってきた。安定同位体投与後の呼気の経時的採取と測定は繰り返し実施したが、血液検査や尿検査などの金額のかかる測定は予備実験では実施していない。また、今後の方策欄でも述べたとおり、予定していた本実験を行うことができなかったため、被験者謝金も予定額を使用するに至っていない。 今後は測定が行える状況になり次第被験者募集に取りかかり、本実験を行う予定である。翌年分の助成金とも合わせて、今年度に確立したプロトコールに沿って測定を実施し、当初に予定した通りの使用をする見込みである。
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Research Products
(1 results)