2020 Fiscal Year Research-status Report
短期のチアミン不足とエネルギー源の偏りが安静・運動時のエネルギー代謝に及ぼす影響
Project/Area Number |
19K11504
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
佐藤 晶子 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 講師 (70593888)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高脂肪食 / 脂質代謝 / 血中乳酸値 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、チアミンが短期的に不足したときに ①なぜ糖質代謝ではなく脂質代謝の停滞とみられる現象が生じたのか ②①の現象はなぜ運動時には見られなかったのか ③エネルギー源が糖質または脂質に偏った場合はどのような変化が生じるのかという3つの課題を掲げている。それぞれについて実験を計画し、①②の課題に対しては【実験1】【実験2】を初年度に実施した。2年目となる令和2年度は【実験3】の一部を実施したため報告する。 【実験3】では、Wistar系雄性ラット(n=24)を普通食群(エネルギー産生栄養素比率:P 26%、F 12%、C 62%)と高脂肪食群(P 26%、F62%、C 12%)に分け、さらにそれぞれを、チアミンを通常摂取する群とチアミン欠乏食(混合ビタミンよりチアミンのみを除いた飼料)を摂取する群に分けた。水分とともに1 週間自由摂取させ、血液、骨格筋、肝臓、腎周囲および精巣上体周囲脂肪を採取した。 摂食量は高脂肪食を摂取した群が有意に低値を示し、解剖時の体重には4群間に有意差は見られなかった。血中グルコース、血漿インスリン濃度においては、高脂肪食およびチアミン欠乏食の影響は見られなかった。腎周囲および精巣上体周囲脂肪量を絶対量および体重当たりの重量において比較したところ、いずれの項目も高脂肪食を摂取した群が有意に高値を示したが、チアミン欠乏食の影響は見られなかった。血中遊離脂肪酸は高脂肪食による有意な低値が確認され、血漿レプチン濃度は高脂肪食による有意な高値が示された。一方、血中乳酸値はチアミン欠乏食を摂取した群が有意な高値を示した。なお、現時点で分析が終了している項目においては、高脂肪食とチアミン欠乏食の有意な交互作用は確認されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は新型コロナウイルスの流行により通常の大学業務を行うことが困難であり、また実験動物の搬入にも制限が生じた。さらに研究施設の大規模改修の影響によって研究活動が困難となる時期があった。その結果、運動時の検討は進んでおらず、計画は遅れがちになっている。 初年度に組織内のチアミン低下がピルビン酸脱水素酵素複合体(PDH)活性へ及ぼす影響が限定的であることが示されたことから、チアミンを補酵素とする他の酵素(2-オキソグルタル酸脱水素酵素、分岐鎖2-オキソ酸脱水素酵素、トランスケトラーゼ2-ヒドロキシアシルCoAリアーゼ)についても検討を進める方針であったが、これらの分析には着手できていない。また【実験3】では、安静時のほか【実験2】と同様の高強度運動時および低強度持久運動時における糖質、脂質代謝への影響を明らかにすることを目的としており、昨年度の内に運動時のサンプル採取を予定していたが、現時点では安静時におけるサンプル採取と一部の分析が完了している状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
予定していた分析を進めることで全体像が浮かび上がってくると考えらえるが、これまで予定していた分析を進めることで全体像が浮かび上がってくると考えらえるが、これまでの結果では、安静時において主に高脂肪食の影響が示されている。したがって、スカベンジャー受容体CD36、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT)1aおよびb、白血球細胞由来ケモタキシン(LECT)2など脂質代謝に関わる分子を分析対象に加え、高脂肪食の影響をより詳細に検討する。またチアミン欠乏食の影響が血中乳酸値に生じていることから、筋肉中および肝臓の乳酸値、さらに細胞表面において乳酸の放出と取込みを担うモノカルボントランスポーター(MCT)1および4の分析も行う。初年度に検討予定として挙げていたチアミンを補酵素とするPDH以外の酵素についても分析を進める。 またこれまでの結果の中で、今回のサンプル数では有意ではなかったが有意傾向を示す項目もいくつか見られた。運動時における影響も【実験3】で検討することとしているが、サンプル数を増やすことも視野に入れながら、安静時の検討を優先的に進めることとする。
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Causes of Carryover |
令和元年度(初年度)は物品の購入を一部見送ったことから20万円を超える未使用額が発生したが、令和2年度の未使用額と令和元年度の未使用額の差がわずかであることから、昨年度は順調に研究費を使用したと言える。 「現在までの進捗状況」で述べたように、令和2年度は【実験3】のうち運動時のサンプル採取を見送った。さらに新型コロナウイルスの影響で現地開催の学会が激減し、学会参加に関わる諸経費が生じなかった。それにも関わらず研究費の使用が進んだのは、分析対象として追加した脂質代謝に関わる分子の試薬や消耗品を昨年度中に先んじて購入したためである。最終年度は運動時のサンプル採取に加え、論文投稿が見込めることから、研究費の使用が進むものと考えている。
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Research Products
(1 results)