2021 Fiscal Year Research-status Report
運動・スポーツ行動への動機づけを規定する挑戦と快情動の精神生理学的研究
Project/Area Number |
19K11522
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
星野 聡子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (80314524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小森 康加 京都光華女子大学, 健康科学部, 教授 (90296773)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 挑戦 / 快・不快 / 認知的評価 / 心拍変動 / 快適自己ペース走運動 / 社会的促進 / 持続的注意課題 / 自己モニタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
運動・スポーツ行動の継続に重要である楽しさや興奮など内発的動機づけに関わる心理面への効果を検証した研究は少ない.今年度は運動・スポーツ行動への動機づけを規定する挑戦と快情動の評価が関わるふたつの実験を行い,その精神生理学的検討を行った. まず,運動習慣のない女子大学生・大学院生を対象に,30分間トレッドミル快適自己ペース走運動において,共に運動を行なうパートナーの存在の有無が,生理,心理,行動(パフォーマンス)に与える影響を経時的に検討した.この結果,生理的側面として,運動時のパートナーの存在は総走距離を有意に延伸させ,一方で運動負荷(心拍数)には差は生じさせなかった.心理的側面では,パートナーの存在は運動中の楽しさや興奮などのポジティブ感情を向上させ,疲労や運動強度の知覚を軽減させた.特に終盤から終了後において運動の楽しさを顕著に増大させたことから,走距離の延伸を見込める結果が得られた.運動中に楽しさや興奮を経験することは内発的動機づけを高めるといわれていることから,今回研究対象とした運動習慣のない若年女性にとって,パートナーの存在による興奮の高まりは運動行動を社会的促進させる効果があることが示唆された. つぎに②として,30分間(15分×2セット)の持続的注意課題時の挑戦に対する認知および情動評価を,自発性瞬目,心拍変動(LF,HF,CVRR),心拍数(HR),連続血圧(SBP,DBP),呼吸数の自律神経系指標の振る舞いから精神生理学的検討を行った.課題にはクレペリン検査を用いた.実験の結果,主観的疲労状態の低さ,挑戦意欲・集中・高覚醒・興奮の上昇といった情動評価が,心拍変動からみた交感神経反応亢進に作用し,パフォーマンスの向上に良い影響を示した.これらは,課題中の作業量(パフォーマンス成績)を自己モニタリングによるフィードバックが作用していることが考察された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大防止対策のため,昨年度被験者を募って実施することが困難で実施できないものが多くあり,今年度の計画に延期された. しかしながら,学内における研究上の対面規制は以前厳しく,細心の注意を払い感染予防を徹底しながら,ようやく実験を実施することが可能となった. また,本研究以外に,学生生活へのコロナ禍の影響を調査し,また,地域在宅高齢者のコロナ禍前後の体力やQOLへの影響を検討するなど,時期を優先すべき研究に時間を要した. また,計画していた国際学会はWeb開催となったため,発表を取りやめた. 以上の理由により,本科学研究費の1年間の延長申請を申し出て,令和4年度に完結する計画に変更した.
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画していた国際学会への参加・発表を科学研究費の補助を得て実現させたいと考えている.また,成果の発信として,これまで行ってきた実験結果を,学会・研究会等で発表し,分析の深化,修正をおこない,学術論文として公表し,本研究をとりまとめ,運動やスポーツ行動への動機づけを規定する心理的側面を認知的な情動評価から分析し,その情動がもたらす身体の適応的応答について終結していくことを計画している.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大防止対策のため,実験実施を大幅に延期し進捗に遅れをとることとなった.また,科学研究費の助成を受けて国際学会等での発表を計画していたが,中止やオンライン実施となったため,来年度に現地で対面による口頭発表を実現させたいと考えている. これらの理由により,本科学研究費の1年間の延長使用を認めていただき,令和4年度に繰り越した研究費を使用して当初計画を遂行することとした.
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