2019 Fiscal Year Research-status Report
成長ホルモンの分子量の違いを利用した新しいドーピング検査法の開発
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19K11530
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
石川 真由美 日本医科大学, 医学部, 講師 (60398831)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 隆紀 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (50381984)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 成長ホルモン / ドーピング検出方法 / 毛髪 / スポーツ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、体内に存在する内因性ホルモンなどの天然型生理活性物質を用いるドーピングが主流となっており、成長ホルモン(GH)も使用されているが、体内にも存在する内因性ホルモンのためにその検出が難しかった。成長ホルモンには分子量が異なるいくつかのVariantがあり、それぞれが決まった比率で血中に存在している。variantの一種で分子量20,000のGH(20K-GH)が、血中のGHの約6%存在し、成長ホルモン産生に占める割合も一定の割合で、ほとんど変化がない(Ishikawa M, et al. J Clin Endocrinol Metab. 84: 98-104, 1999. Tsushima T, et al. J Clin Endocrinol Metab. 84: 317-322, 1999.)。外部からの成長ホルモン投与があった場合には、ほとんどが22K-GHであるため血中や尿中の20K-GHの割合が低下する。 本研究ではこの特性を生かし、試料を頭髪とすることで数ヶ月前のGHのドーピングや 長期の休薬があっても検出できる新しいドーピング検査方法の開発を目的とした。頭髪は侵襲なく採取でき、一か月に1cmほど伸長することから、毛根部から1cm刻みで頭髪を切断し、各部位を解析することで、1か月ごとの薬物摂取歴を分析することが可能である。体内に取り込まれた外部からの薬物は、毛乳頭に入り込んだ毛細血管部を介して毛根部に移行し、メラニン色素と結合して毛髪内部に蓄積するとされている(木倉瑠理、他。国立医薬品食品衛生研究所報告 116: 30-, 1998. H.Kimura, et al. J Anal Toxicol 23:577-, 1999.)。GHが頭髪内に取り込まれているのか、その量は本研究で使用する質量分析計(X500R QTOFシステム、Sciex社)で検出できるのかが、一つの課題であり、我々は、まず正常人の毛髪からGHを検出することを試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
下垂体を用いて、GHが質量分析計(X500R QTOFシステム、Sciex社)で検出できるかを検討した。その結果、下垂体からはGHの検出が可能であった。次に正常人の毛髪のGHが質量分析計で検出できるか検討したところ、ケラチンが多く、検出ができなかった。そこで、ケラチンを除去した状態で、GHが検出できるか否かを検討する予定である。毛髪のGHを質量分析計を用いて検出できなかったため、GH分泌不全の患者からの毛髪の解析には至っていない。 また質量分析計を用いない他の方法も試みた。その一つは、western blotを用いた検出であるが、GHの検出には至らなかった。 さらに正常人の毛髪の毛根部に対して抗GH抗体を用いた免疫染色を検討した。毛髪を叩くことでケラチンの多い外側の毛皮質、毛小皮を取り除き、毛根の毛髄質部分を抗GH抗体にて免疫染色を行なった。その結果、抗GH抗体に陽性の部分が認められた。が、今後、アーティファクトである可能性の検討や、抗20K-GH抗体が使用できるかなどの検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
質量分析計を用いての解析として毛髪のケラチンの除去を行ってから施工できないか検討する予定である。 毛髪の免疫染色に関しては、種々の抗体を用いての染色を試している。 上記にて、GHがうまく検出できない場合には、毛髪以外の他の資料、例えば口腔内を擦過して得た頬粘膜細胞を用いて、GHの検出を試みることを検討している。またGH以外の関連する物質、例えばGHによって産生が調節されているインスリン用成長因子―I (IGF-I)の検出も検討予定である。
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Causes of Carryover |
免疫染色を行うために必要な試薬やGHをはじめとする生理活性物質の抗体、GHなどの生理活性物質を測定するための測定キット、また質量分析に必要な試薬の購入を必要とする。またGHの検出ができるようになればサンプルを保存するための冷凍庫などが必要となる予定である。
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