2020 Fiscal Year Research-status Report
組織温度の変化に起因したグリコーゲン代謝調節機構の解明とその実践的応用方法の検討
Project/Area Number |
19K11535
|
Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
越中 敬一 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 准教授 (30468037)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 英幸 筑波大学, 体育系, 教授 (00292540)
塙 晴雄 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 教授 (40282983)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | へパトカイン / 温熱 / 入浴 / グリコーゲン |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題では、組織温度の変化に起因したグリコーゲン代謝調節機構を明らかにすることを目的としている。身体へ温熱刺激である温水入浴が、ヒト筋グリコーゲン代謝とヒト肝グリコーゲン代謝に与える影響を炭素磁気共鳴分光法(13C-MRS)によって検討する。また、これら代謝調節を担う分子群としてヘパトカインの関与を仮定し、動物実験によってその作用機序の解明を試みる。ヒト実験と動物実験で得られた生理反応や解釈を基盤とし、「スポーツ現場における実践的応用法」の確立を目指す。 我々は被検者に対して20分間の温水入浴を負荷した。その際、呼気ガスを採取し、換気量,酸素摂取量,二酸化炭素排出量を分析した。また、13Cでラベルされた安定同位体であるグルコースを摂取させ、酸化されて排出された13CO2(外因性グルコース由来の酸化量)を測定した。さらに、温水入浴時が血中のへパトカイン濃度に与える影響を検討した。 その結果、温水入浴によって換気量が増大し、エネルギー消費量が増大した。また、呼吸商の増大と13CO2排出量の増大を確認した。これらの結果は、入浴によって少なからず外因性のグルコースの酸化が増加していることを示している。グルコースの酸化量の増大は解糖系の中間代謝産物が骨格筋に増大する際に確認できる現象であるため、骨格筋、もしくは肝臓における細胞内グリコーゲンが温水入浴によって分解されている可能性を強く示唆している。また、へパトカインの血中濃度を測定したところ、被検者全員が増加を示した分子を確認できた。このことは、温水入浴が様々な生理機能に関与しているへパトカインの調節因子になり得る可能性を示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究課題は、ヒトの筋・肝臓におけるグリコーゲン濃度を国立スポーツ科学センターで測定をする予定であった。これらの研究は本研究における中核的な目的でありながら、昨今のコロナ禍に関連して、現在に至っても同施設の利用ができていない。少なからず東京オリンピックが閉幕するまでの間において、施設利用は不可能であることが予想される。この点、今後の方針として以下に対応を示す。 一方、グリコーゲンの測定以外に関しては、研究代表者が在籍している新潟医療福祉大学で実施している。入浴装置を新たに設置し、実験条件や分析条件は全て整え終わっており、サンプリングにおける実験上の支障は全て解決済であるため、実験自体は基本的に円滑に行われている。しかしながら、本学においても厳しいコロナ対策が実施されており、日々その対応に関するレギュレーションが変化している。入浴実験という性質上、被験者の確保や安全を担保した実験進行を確実にする必要性から、実験の実施頻度に関しては十分とは言い難い状況が存在している。 よって、総じて研究は遅れていると判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度、国立スポーツ科学センターの利用に関しては、東京オリンピックの閉幕後となる時期において、コロナ禍の状況が改善することを期待して実施予定としている。当初の予定では新潟医療福祉大学での実験に参加した学生を新幹線によって国立スポーツ科学センターに移動させ実験に参加させる予定であったが、コロナ禍の状況によっては宿泊を伴う実験が許可されない可能性も予想される。その場合、被験者を現地で募集することで宿泊をすることなく実験を進める。なお、今年度もコロナ禍の状況は依然不明瞭であり、今後、状況を鑑みながらの対応にはなるが、実験期間の延長も念頭に入れながら対応をする予定である。 グリコーゲン以外の実験に関しては、全て今年度中に終了となる予定である。今後、新潟医療福祉大学において、被検者数を増やし、血液性状の分析項目も増やしながら検討を進めていく。また、今年度の前半においては、実験計画書の通り、動物実験による検討を進める予定である。
|
Causes of Carryover |
初年度の2019年度および2020年度において実施予定であった筋グリコーゲンに関わる実験が最終年度にずれ込んでいる関係で、多くの予算を最終年度に確保している。また、今後被験者の交通費や宿泊費として計上していた予算の使用が大幅に少なくなることが予想されるので、その分の予算をへパトカイン等、血中の測定項目を増やすことで研究内容の拡充を進める予定である。
|