2022 Fiscal Year Annual Research Report
スキーにおける前十字靭帯損傷リスクを低下させる滑走技術の解明
Project/Area Number |
19K11545
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉岡 伸輔 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (20512312)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アルペンスキー / 前十字靭帯 / スキーシミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
アルペンスキーにおいて前十字靭帯(ACL)損傷は深刻な予後を招くことから、その受傷メカニズムについて長く研究が進められてきた。本研究は、ACL損傷リスクの低い滑走技術について明らかにすることを目的として実施した。7種類の滑走条件について実際のスキー滑走データを取得し、それらデータとスキーの動力学シミュレーションを組み合わせて解析を行った。シミュレーションでは、ACL受傷の主要状況であるスリップ後に再度雪面をキャッチする(スリップキャッチ機構)の場面を設定した。また、膝関節についての負荷を雪面特性やスキー特性との関連性も含めて求めた。その結果、滑走技術の違いによる負荷の差異について観察されたものの、その影響は相対的に小さいことが明らかとなった。すべての動作について、スキーのテール部に雪面から受ける力がスキーを梃子として膝関節周りに過大なモーメントを引き起こすことが共通して観察され、スキーテールを無くしたシミュレーションにおいて、そのモーメントが大幅に低下したことから、その点が重要な因子であることが示唆された。この点はJohnsonら(1974)が50年前に述べたことと同様であり、その点を定量的に裏付けるものである。スキー板が足部よりも長いことは、スキー動作の前提となる特性であり、ACL損傷防止の困難さが示された結果と言える。 なお、従来よりACL損傷の重要な因子の一つと推察されてきたサイドカーブについては、サイドカーブのみを変更したシミュレーションによって、直接的な因子として影響は小さいことが明らかとなった。当研究では、スキー板の雪面保持力が膝関節モーメントに大きな影響を与えることも示されており、保持力との関連を通じて、サイドカーブが影響している可能性が示唆される。サイドカーブの影響については今後更なる研究が必要と言える。
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