2020 Fiscal Year Research-status Report
飢餓ストレスを利用した骨格筋細胞のタンパク質合成促進経路の活性化
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19K11553
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
中井 直也 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (90324508)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 飢餓ストレス / 栄養素再補充 / タンパク質合成促進シグナル / 骨格筋細胞 / α-ケトグルタル酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨格筋量の維持・増進の方策提案およびそのメカニズムの解明は、健康寿命伸延のための必須の課題である。本研究では、飢餓ストレスによるタンパク質分解に着目し、タンパク質合成を高めるためには、タンパク質分解が重要であるとの仮説のもと研究を実施している。2020年度は、飢餓ストレス後の栄養素の再補充が、骨格筋細胞のタンパク質合成シグナルを増強するメカニズムについてさらに解析を進めた。十分に分化誘導を行ったC2C12筋管細胞を対照群、グルコース飢餓群およびグルコース再補充群に分け、細胞を回収しメタボローム解析を実施した。その結果、約200種類の中間代謝物質を同定した。さらに、グルコース飢餓時およびその後のグルコース再補充に対するp70S6Kのリン酸化の変化と同様の変化を示す中間代謝物質を複数同定した。そのうちクエン酸回路の重要な中間代謝物質であるα-ketoglutarateについて添加実験を行った。その結果、24時間のグルコース飢餓後にα-ketoglutarateを添加してもp70S6Kのリン酸化には影響を及ぼさなかった。一方、α-ketoglutarateの前駆物質である細胞透過性のdimethyl-α-ketoglutarate (DMKG) を添加するとp70S6Kのリン酸化が上昇することを見出した。さらに、興味深いことに添加するDMKGの最終濃度が2 mMの時にp70S6Kのリン酸化が最も高く、5 mM以上の濃度ではリン酸化上昇作用が減弱した。この結果は、タンパク質合成シグナルであるp70S6Kのリン酸化は、解糖系に加えてクエン酸回路の代謝変動による調節を受けている可能性を示唆している。他の中間代謝物質についても今後検討を加える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナウイルス感染予防のため本年度当初は研究の実施に支障がでたが、その後は順調に進んでいる。本研究の目的の一つである飢餓ストレス効果の発現メカニズムの解明について、一歩前進した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度である今年度は、飢餓ストレス効果の発現メカニズムの解明についてさらに検討をすすめる。また、これまでin vitroで得た結果が個体でも認められるかについて実験動物を対象に解析を実施する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染予防のため、年度初めの数ヶ月間は研究の推進に支障がでたため。また、感染予防のための移動制限により旅費の支出がなかったことが理由である。受託解析も含め、効果的に助成金を使用し研究成果を上げる。
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Research Products
(4 results)