2020 Fiscal Year Research-status Report
骨格筋における機械的刺激によるエネルギー代謝調節機構の解明
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19K11554
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Research Institution | Hirosaki Gakuin University |
Principal Investigator |
宇田 宗弘 弘前学院大学, 看護学部, 准教授 (80549262)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 筋萎縮 / ミトコンドリア / Parkin / HSP70 / ユビキチン化 / タンパク質分解系 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は萎縮したヒラメ筋において,heat shock protein (HSP) 90とHSP70が減少すること,また マイトファジーに関与するPINK1とParkinの発現は変化しないこと,およびParkinのニトロシル化も変化しないことを明らかにした。これらの結果から,Parkinは過剰なニトロシル化によりその機能が抑制されていないことが示唆された。一方,E3ユビキチンリガーゼであるParkinはHSP70が減少した状況においては機能が低下することが報告されている。萎縮したヒラメ筋ではHSP70が減少することから,萎縮したヒラメ筋ではParkinの活性が低下している可能性が考えられた。そこで2020年度はParkinの標的タンパク質であるmitofusin 2(MFN2)に着目し,Parkin活性の指標としてMFN2のユビキチン化が減少するのか否かを検証した。その結果,ユビキチン化されていない通常の分子量である約80kDaのMFN2の発現は減少傾向を示したが,ユビキチン化されている可能性のある高分子量のMFN2は増加する傾向を示した。また高分子量のMFN2のユビキチン化は有意に減少することが明らかとなった。これらの結果から,萎縮したヒラメ筋ではParkinの機能が低下している可能性が示唆された。Parkinの機能低下はミトコンドリア機能を低下させ,筋萎縮を誘導することが示されている。したがって,不活動による筋萎縮においても,Parkinの機能低下によってミトコンドリアの機能不全が生じ,ミトコンドリアによるエネルギー産生に影響する可能性が考えられる。この点についてはさらなる検討が必要である。なお,今年度は2019年度と2020年度の実験結果をまとめ,学術雑誌に論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は萎縮したヒラメ筋において,Parkinの機能が低下している可能性を見出した。さらに,2019年度と2020年度の実験結果をまとめ,学術雑誌に論文として発表した。したがって,おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度までは,萎縮したヒラメ筋を用いて研究を行ってきた。ヒラメ筋は主に遅筋線維で構成され,不活動によって筋萎縮が生じやすいことが知られている。一方,主に速筋線維で構成される足底筋は,不活動による筋萎縮の程度が少ない。したがって,足底筋では不活動による筋萎縮を防ぐメカニズムが働いていることが推測される。そこで2021年度は,足底筋におけるnNOS,nNOSと相互作用するタンパク質,PINK1,およびParkinの発現などミトコンドリアの機能に関係するタンパク質発現について分析し,これらのタンパク質が筋萎縮を防ぐメカニズムに関係するのか否かを検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは,学会がオンライン開催となり,旅費として使用しなかったこと,実験に使用する試薬の納品が遅れたこと,廃棄物処理業者による実験廃棄物処理に関わる手続きが遅延したことが原因である。この次年度使用額は,次年度の実験に必要な物品の購入,旅費,廃棄物処理費として使用する予定である。
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