2023 Fiscal Year Research-status Report
運動負荷が反応抑制・変更機能に関わる大脳皮質活動に及ぼす影響の解明
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19K11559
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高寄 正樹 日本大学, 生産工学部, 准教授 (40635520)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 反応抑制 / 運動負荷 / 大脳皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの認知機能のなかでも予定の運動方略を抑制するということは,環境内で最適な行動選択をするうえで重要である。この認知機能の研究は,実験室内でスタティックな座位姿勢にて行われてきたが,運動負荷中の反応抑制についての先行研究においては,生理指標をもとにコンセンサスの得られている結果はない。そこで,本研究では,運動負荷として自転車エルゴメーターによるペダリング運動を,反応抑制および反応変更機能の検討にStop-signal 課題を用い,さまざまな強度の運動負荷をともなう反応課題中の脳波出現様式から,本研究課題を解明することを目的とした。本年度は自転車エルゴメーターによるペダリング運動の運動負荷強度は,35%HRR(予備心拍数)の低強度群,50%HRRの中等度群と,70%HRRの高強度群の3群に分けた。反応抑制課題としてStop-signal 課題を用い,運動負荷前(Control条件),運動負荷中(Exercise条件),運動負荷直後(Recovery Ⅰ条件),運動負荷20分後(Recovery Ⅱ条件)の4局面の反応抑制機能について群間による比較検討を行なった。実験においては各局面での脳波,心拍数,Stop-signal 課題のパフォーマンスについて記録をした。その結果,3群ともに正反応時間ならびに誤反応時間において、Exercise条件で反応時間が短縮する傾向がみられ,高強度群においてはRecovery Ⅱ条件で反応時間の延長が確認された。高強度群は他の2群よりも、Recovery ⅠおよびⅡ条件時にSSRTが短縮し,SSDが延長する傾向がみられた。運動負荷中における脳波帯域成分については群間の差はみられなかったが,回復期の高強度運動群のα帯域の増加が顕著で,反応時間も延長していたことから,運動時の覚醒度に与える影響よりも,運動負荷による疲労の影響が顕著となる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和5年度は延長申請を行い,当初研究計画における実験を完了し,解析まで終えることができていたが,より精度の高い結果を求めるために追加で実験を行い,データ数を積み上げた。そのため,論文執筆にとりかかる時期が遅れてしまい,研究計画を完了する状況には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
延長申請した令和5年度においては,実験参加者を自転車エルゴメーターの負荷設定の違いでの3群(低強度・中等度・高強度)に分け,それら条件間の比較を行うことで新たな知見を得ることができた。令和6年度においては,サンプル数を増やすための追加実験によって得られたデータの解析ならびにそれらの結果をもとに総合的な検討を進め,運動負荷が反応抑制機能にどのような影響を与えるか明らかにする。その成果として論文を執筆,投稿を行う。
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Causes of Carryover |
追加実験により実験に必要な物品を購入したが,論文執筆作業に取り掛かる時期が遅れたため,すべての予算を使用できなかった。 次年度は,論文執筆のための消耗品として使用する予定である。
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