2021 Fiscal Year Research-status Report
青少年スポーツ指導者を対象としたアンガーマネジメントプログラムの開発
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19K11561
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Research Institution | Toin University of Yokohama |
Principal Investigator |
渋倉 崇行 桐蔭横浜大学, スポーツ科学研究科, 教授 (30288253)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アンガーマネジメント / 青少年 / 指導者 / コーチ / ハラスメント / 介入プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,①指導者の怒り感情と暴力行為に関わる実態把握,②指導者の暴力行為の発生と予防に関わる理論的枠組みの検討および測定尺度の作成,③指導者の暴力行為の発生機序と予防因子の検討,④指導者の暴力行為の発生を防ぐアンガーマネジメントプログラムの開発とその評価であった.2019年度は,指導者の怒り感情と暴力行為に関わる実態把握として,これまでに発生した暴力行為を理解するとともに,怒り感情の表出過程や予防因子の検討を実施した. 2020年度は2019年度の研究結果を踏まえ,アンガーマネジメントプログラムを試行的に実施しその効果を検討した.そして,2021年度は柔道指導者の怒り感情が表出する場面状況の因子構造を検討した.その結果,3つの因子が抽出された.第1因子は「周囲に迷惑をかける行動」で,広く他のスポーツでも大切にされる所属する集団の規律を乱したり,責任感のない行動や態度があったりなど,周囲に迷惑をかける行動がある場面状況であった.第2因子は「未熟なプレー」で,集中力や向上心が欠けていたり,消極的であったりなど選手の未熟なプレーがある場面状況であった.第3因子は「礼儀に欠けた振舞い」で,柔道で特に大切にされる内面と外面が揃った礼儀に欠ける振舞いがある場面状況であった.柔道指導者は,これら3つの因子が含まれる場面状況で怒り感情を表出していることが分かった.また,広くスポーツ指導者を対象とした調査では尺度作成に向けた項目収集が行われた. 396個のデータがKJ法を用いて分析され,消極的なプレー,不真面目なプレー,自分勝手なプレー,危険なプレーのサブカテゴリーからなる「選手のプレー」カテゴリーと,対自己,対他者(コーチ),対他者(コーチ以外)からなる「選手の姿勢」カテゴリーに分類された.「選手のプレー」と「選手の姿勢」に関わるカテゴリーに分類された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の最終的な目標は,指導者の暴力行為の発生を防ぐアンガーマネジメントプログラムの開発とその評価を行うことであった.2020年度の実践研究の試行的実施はそのための検討材料を得るものとして十分であった.ただし,2021年度の研究ではプログラムの効果検証を行うための評価尺度を作成することが見込まれたが,柔道指導者を対象とした調査では怒り感情が表出する場面状況の因子構造は明らかとなったものの,広くスポーツ指導者を対象とした調査では因子構造を検討するまでに至っておらず,また信頼性と妥当性の検討も行われていない.ただし,データは収集済みであることから,評価尺度の作成とその信頼性・妥当性の検討は2022年度の計画の中に含めて実施される予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は,以下の3つの研究を行う.1つ目は2021年度に実施された指導者の怒り感情が表出する場面状況の尺度作成に関わる研究を継続する.すわなち,広くスポーツ指導者を対象とした調査を実施することにより,怒り感情が表出する場面状況の因子構造の検討,尺度作成を行い,またその尺度の信頼性と妥当性を検討する.これに関わるデータは既に収集済みであるので,今後は,統計解析を進めていく.2つ目は,指導者の暴力行為の発生機序と予防因子の検討である.3つ目は,指導者の暴力行為の発生を防ぐアンガーマネジメントプログラムの開発とその評価を行うことである.ただし,コロナ状況によっては,3つ目の指導者の暴力行為の発生を防ぐアンガーマネジメントプログラムの開発とその評価に関しては,協力依頼先の都合によって今年度中の完了は難しいことも見込まれる.その際は,研究期間の延長も視野に入れる必要がある.
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Causes of Carryover |
コロナ禍における調査の制限により,予定していた調査旅費やデータ入力補助の支出が未執行となった.これは昨年度と同様である.状況の回復を待つとともに,2022年度中に実施される調査において,より精度の高い研究データが得られるよう研究費を効果的に使用したい.特に指導者の暴力行為の発生を防ぐアンガーマネジメントプログラムの実施については,継続的な実践と調査が必要である.そのための調査旅費として効果的に利用したい.
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Research Products
(1 results)