2019 Fiscal Year Research-status Report
英国プロサッカークラブにみる資金調達多様化とその可能性について
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19K11567
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
西崎 信男 九州産業大学, 人間科学部, 教授 (20372245)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 資金調達 / サポータートラスト / マンチェスター・ユナイテッド / ニューヨーク証券取引所 / 地域の利益(Community Benefit) / 地域からの支援 / クラウドファンディング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、英国プロサッカークラブにおける大規模クラブの資金調達(上場及び新株発行による資金調達)、及び中小クラブにおけるサポータートラストによるサポーター(ファン)からの資金調達を例に、企業規模に応じた資金調達の方法を比較検討してプロスポーツにおける資金調達のあり方を求めることを目的とする。(実績)まず大規模クラブの資金調達例として、マンチャエスター・ユナイテッド(MANU)株式(NY証券取引所上場)の調査のためにニューヨークに出張し、大手証券会社のリサーチ・米国株式担当者とMANU株式のみならず、プロスポーツを含むエンターテインメント株式全般について議論を重ねた。MANUはサッカーでは世界有数のクラブで大企業であるが、NY証券取引所上場株式としては小規模資金調達で流動性も少なく機関投資家からの投資意欲は小さい。今後の展開は難しそうである。一方、小規模クラブの資金調達については、英国・フランスに出張して、FSA(サッカーサポーター連盟)、各クラブサポータートラスト(クラブのファン支援組織)役員等とミーティングを重ねた。サポータートラストの法律上の位置付けが根拠法の変更(2014年)により、「サポータートラストの会員の利益のため」から「(所在する)地域の利益のため(Community Benefit)」と性格が明確化された点が大きい。まさに小規模クラブの今後の生き残りを考える際には、地域からの支援が不可欠である。サポータートラストという相互組織における意思決定のための数々の仕組み(役員選挙、およびその補充体制)、サポーターの意向をクラブ経営に生かす方策(サッカーリーグ及びクラブの役員との定例情報交換会実施等)についてもあらたな展開がみられた。また新しい資金調達の実例として、クラウドファンディングを活用して株式・私募債による資金調達が出てきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小規模クラブの資金調達については、AFC Wimbledon(英国3部リーグ)クラブで自らが会員であるサポータートラストの支援を受けて、英国におけるサポータートラストの実態調査、法律上の位置づけの変更把握、それに加えて多数の参考文献にて裏付けをとり学会等発表・著作執筆等に結び付けることができた。他方、大規模クラブの資金調達については、NY証券市場の基礎的な知識獲得、全般的な市場動向の把握、複数種類株式発行のチェック等はニューヨーク出張によって実行できたが、主調査先であるマンチェスター・ユナイテッド株式自体の発行額が小さく、大手証券会社の株式調査フォロー銘柄から外れていることもあり、業者との直接のミーティングによる情報収集が困難であった。市場関係者の動向は早く、大学教員に対してアポを取ってくれる業者は少なかった。それをカバーするために、NYの金融情報取得のためにNYのネット情報を継続調査したほか、英国のThe Times等の新聞にてNY金融情報、マンチェスター・ユナイテッド株式情報を取得することで補った。
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Strategy for Future Research Activity |
(研究計画の変更) 2020年初頭からのコロナウイルス勃発により、米国・欧州への研究出張のみならず、国内研究出張、学会発表も見通し難で、文献調査による研究が中心になる。特に米国への海外出張については、研究計画変更は不可避である。 (対応策)小規模クラブの資金調達(サポータートラスト)については、これまでの研究実績、文献調査、および英仏への研究出張で、材料は取得しており、今年度はそれをまとめて、単著として発表するように注力中である。
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Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由)当初の計画では最初に英国出張を行う予定であったが、米国への出張が翌年度になれば現地でのアポ取得が難しいとの状況が発生したため、急遽米国出張を前倒して実施した。英国等への出張は別途研究資金でも実施する予定であったため、科研費で出張する時間がなくなり予算の次年度使用となった。 (次年度の使用計画)コロナウイルスの状況次第であるが、英国、フランス等への出張を計画している。更に状況の改善があれば、米国への出張も実施する計画である。
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