2020 Fiscal Year Research-status Report
英国プロサッカークラブにみる資金調達多様化とその可能性について
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19K11567
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
西崎 信男 九州産業大学, 人間科学部, 教授 (20372245)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マンチェスター・ユナイテッド(MANU) / マンチェスター・シティ(MCF) / 非上場株式 / 企業価値評価 / クラブの経営理念 / 安定的資金調達 / 株式投資型クラウドファンディング / 特定大口投資家からの出資 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、英国プロサッカークラブにおける大規模クラブの資金調達(上場及び新株発行による資金調達)、及びによるサポーター(ファン)からの中小クラブにおけるサポータートラスト(組合組織)の資金調達を例に、企業規模に応じた資金調達の方法を比較検討してプロスポーツに資金調達のあり方を求めることを目的とする。(実績)まず大規模クラブの資金調達例として、マンチェスター・ユナイテッド(MANU)株式(NY証券取引所上場)の動向で大きな動きがあった。プレミア・リーグのライバルクラブでマンチェスター・シティ(MCF)の親会社City Finance Group(CFG)に対して米国の機関投資家が10%出資した。その出資総額から、MであるCFの時価総額が計算された。本来、上場株式の株価から非上場株式の株価、時価総額を計算されるのが通常であるが、本件は非上場株式MCFの株価、時価総額が計算され、それが上場株式であるMANUの株価に反映され、株価が一時的に急騰したのである。プロスポーツクラブの企業価値評価(Valuation)について大きな示唆を与える事例であった。他方、小規模クラブの資金調達については、ファンが所有するクラブであるAFC Wimbledon(イングランド3部)」のクラブ本拠地スタジアム移転に関する資金調達の事例に関して「株主会員」として議論に参加した(ロンドンの定期株主総会に出席、帰国後はオンラインでの株主総会、情報交換会等に参加)。現在のリーグに維持(降格を避ける)しながら、クラブの経営理念(ファンのためのクラブ)と安定的資金調達(新株発行のよる資金調達)のバランスを採ることは大変難しい。その間、株式投資型クラウドファンディング、サポーター・クラブ関係者向け私募債発行、特定第三者からの大口出資の案件等中小クラブの資金調達についての課題が満載であり研究意欲をそそられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍で米国、英国に出張できず、実踏調査が進まなかった。その代わりとして、(1)米国のプロスポーツ球団の経営・金融調査についてはニューヨーク在住の米国人研究者とメールで議論して進めている。(2)英国の小規模クラブについては、自分が個人株主会員であるので、ネットで株主総会、臨時株主総会に出席し、論点を整理し議論している。コロナ蔓延の直前の2月に英国を往訪、関係者との打ち合わせを行っているので、議論に参加出来ている。(3)過去2年の研究を基盤として、収集した文献を読破して、研究を推進している。(4)日本でのプロスポーツクラブへの応用を視野に、各界の識者、具体的には弁護士、税理士、プロスポーツ経営者、広告宣伝業者等々と研究会を開催し論点を議論した(オンライン)。
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Strategy for Future Research Activity |
(研究計画の変更)昨年度NYと英国に出張できなかったので、本年度はぜひとも往訪してフォロー調査したいが、コロナ禍で先行き不透明である。(対応策)1.米国の制度、課題の議論:在ニューヨークの米国人研究者(テンプル大学大学院ファイナンスの教員)とのネットでの議論を継続する。6月に訪日の予定があるとのことで、実現の際には対面で議論を行いたい。2.前年度に開始したスポーツM&A研究会で各界の識者と違った角度からの議論を継続したい。3.今年度から、日本のクラブへの応用、及び先方クラブからのフィードバックをもらい、研究を深化させる。他の研究者との連携によって、Jリーグクラブの社長、GMへのアクセスがあるため、プロサッカークラブの資金調達についてのアイデアの提供、先方からのフィードバックを得て、研究を行いたい。4.本研究での研究実績をもとに、スポーツファイナンスの書籍をまとめたい。
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Causes of Carryover |
令和2年度に計画していた米国、英国出張が、コロナ蔓延のために中止となったために使用額が計画を下回ったためである。令和3年度は、コロナ蔓延状況によるが、延期となっていた米国、英国出張を行う他、国内学会、研究会に参加する計画を策定している。
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Remarks |
*Sports M&A研究会 プロスポーツクラブ・球団の経営・金融に係る研究会。弁護士、税理士、大学教員、プロサッカークラブ関係者、広告業界等々プロスポーツビジネスに関わる関係者の議論の場である。
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