2021 Fiscal Year Research-status Report
英国プロサッカークラブにみる資金調達多様化とその可能性について
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19K11567
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
西崎 信男 九州産業大学, 人間科学部, 教授 (20372245)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 上場 / サポータートラスト / ファイナンス(資金調達) / スポーツファイナンス / クラブ経営 / 地域密着 / 経営理念 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、英国プロサッカークラブにおける大規模クラブの資金調達(上場含む)、及び中小クラブにおけるサポーター(ファン)で組織されるサポータートラスト(組合組織)の資金調達を例に、企業規模に応じた資金調達の方法を比較検討してプロスポーツの資金調達の在り方を求めることを目的とする。前年度に続き当該年度もコロナ禍が深刻化したため、先進事例である海外のクラブを現地調査することができなかった。しかし、過去2年の研究成果を「スポーツファイナンス入門~プロ野球とプロサッカーの経営学~」(税務経理協会)にて単著で上梓できた。これにより、本研究の途中経過報告を取りまとめ、自己点検することで、研究者・プロスポーツクラブ関係者・一般読者に対して、「プロスポーツの裏側に経営があり、ファイナンス(資金調達)が重要な役割を果たしている」ことを説明することができた。その間、いくつかの個別クラブ(プロサッカー)の経営陣とのインタビューもビジネスサイドと協働することで日本のプロサッカーの資金調達に対する考え方、実態を知ることができた。クラブ経営、特にファイナンス面での強化がクラブ生存、発展のために不可欠との意を強くした。経営コンサルタントの団体である中小企業診断士の組織からも、プロスポーツと経営学の関係についての講演依頼を受け、「プロサッカーと経営学」と題して講演を行った。スポーツビジネスが一般企業の間でも注目を集めている証左と思われる。それらの流れを受けて、NHK<Web>から取材を受けて、「応援は力になる!」と題する記事において、英国における地域密着とクラブの関係、及びファンの貢献について説明することができた。ファンのクラブという経営理念と中小クラブのクラブ経営(戦力充実のために赤字経営ができない)のジレンマが課題で、マネーゲーム化しているプロサッカーリーグでの生き残りは至難の状況となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に続き、コロナ禍で計画していた欧米出張のみならず、国内出張もままならない状況に陥ったため、現地調査、関係者ヒアリング、論点についての議論等対面で行えなかった。米国については研究協力者がコロナの影響で来日できず、意見交換ができなかった。英国についても同様の状況であったので、それまでに収集した文献、往訪記録等をもとに研究を進め論点を整理した。その結果、本研究を活用した「サッカーファイナンス(プロサッカークラブの資金調達方法)」の研究深化により、2021年10月に単著「スポーツファイナンス入門~プロ野球とプロサッカーの経営学~」を上梓することができた。研究者のみならず、一般読者のスポーツファイナンスへの興味を増進させることができたと思われる。その他、所属する日本スポーツ産業学会全国大会(7月:オンライン)で大会実行委員長として「スポーツとファイナンス~地方からの発信」と題して大会の企画、運営、およびゲストを招いたセッションの司会、コメンテーターを行った。それにより、スポーツとファイナンスについての問題提起を行い、議論を喚起することができた。また所属する職業団体である中小企業診断士の会合(オンライン)でゲストスピーカーとして「プロサッカーと経営学」と題して、プロサッカーの経営学的分析について発表し、活発な質疑応答があった。当初計画に変更を余儀なくされたが、年度を通してみればスポーツファイナンスという新分野での研究、発表、執筆等で当初目的の「プロスポーツにおける資金調達の在り方を探求する」ことには貢献できたと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
1年延長となった今年度もコロナ禍の影響は大きいが、国内外での状況を勘案してタイミングをみて、欧州・米に出張して、現地調査、現地関係者との議論等を行うことで、自著でまとめた研究結果をさらに進化させて、本研究の区切りとしたい。なお、米国についてはプロスポーツクラブの上場の事例が極めて少なく関係者とのアポイントメントの取得も難しいので、今年度についてはプロサッカークラブの上場事例が多い欧州での実踏調査を代わりに検討することにしたい。候補先は英国(イングランド、スコットランド:上場クラブ2および3部のクラブ))、イタリア(上場クラブ2)、ドイツ(同1)、オランダ(同1クラブ)を候補として考えている(アポイントメントの取得の可否による)。国内での研究については、再開となったスポーツマネジメント/ファイナンスの研究会(スポーツナレッジ研究会)、及び所属学会を中心に議論していきたい。なおサッカーJリーグ事務局より、「Jクラブの上場および資金調達の計画」の発表があった(2022/2月)。日本のプロサッカークラブは企業内容開示が欧州のクラブに比して不十分であり、それなくしてはファイナンスの前提条件となる上場は難しい。欧米での展開を踏まえて、日本のプロサッカークラブの上場の問題、ファイナンスへの応用を考えていきたい。
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Causes of Carryover |
出張にて現地調査を予定していた欧州、米国でのコロナ禍が深刻化することによって、相手先の都合もあ出張りができなかったため、次年度使用額が生じた。コロナ禍の進展度合いにによるが、次年度は延期となっていた欧米への出張を実施する予定である。
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Remarks |
・researchmap: http://researchmap.jp/read0199775 ・講演:中小企業診断士三田会 論題「プロサッカーと経営学」 (5/29 オンライン)・学会運営:日本スポーツ産業学会第30回大会大会実行委員長 大会テーマ「スポーツとファイナンス~地方からの発信」(7/10-11 オンライン)・報道:NHK<Web>「応援は力になる」(12/17)
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Research Products
(1 results)