2021 Fiscal Year Research-status Report
体力測定データを用いた疾病予防のための新規予防法開発に向けた疫学研究
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19K11591
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Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
丸藤 祐子 駿河台大学, スポーツ科学部, 准教授 (60613932)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 柔軟性 / 立位体前屈 / 動脈スティフネス / 高血圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
全身持久力・筋力・柔軟性は体力の主要な構成要素であるが、全身持久力や筋力は、健康関連体力として重要視され、これまでに多くの先行研究によって疾病発症との関連が報告されている。一方で、柔軟性については、全身持久力や筋力といった体力ほど、これまで重要視されてこなかった。本年度は、昨年度実施した新規予防法開発に向けたコホート研究から明らかとなった体力である「柔軟性」に焦点を当てた文献レビューを実施した。横断的および縦断的調査による観察研究において、座位体前屈で評価した体幹の柔軟性は、全身持久力と独立して、baPWVおよびcfPWVと負の関連を示すことが報告されていた。柔軟性と動脈スティフネスの関係の性差について調査した研究では、男性と中高年女性において、柔軟性と動脈スティフネスに関連があることが報告されていた。柔軟性と動脈スティフネスの加齢変化や性差等の共通性については、加齢に伴う動脈スティフネスの増加は中年期以降に加速するが、同様に、他の研究においては柔軟性も中年期以降に低下が加速することが約6,000人を対象とした調査で報告されていた。女性は男性よりも柔軟性が高く、動脈スティフネスが低いという共通性もある。また遺伝的要因については、ACTN3遺伝子は柔軟性の独立した遺伝的要因である可能性があり、RR型はXX型よりも低い柔軟性と関連していることが報告されていると共に、他の研究においてRR型は、高い収縮期血圧と関連することも報告されていた。以上の内容が柔軟性に関する文献レビューにより整理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度までに、全身持久力以外の体力(柔軟性)と疾病発症との関連を調査し、新規予防法開発に向けたコホート研究を実施した。最も高い柔軟性グループは、最も低いグループと比較して、15%低い高血圧の罹患のハザード比であり(HR, 0.85 [95%CI, 0.78 - 0.92])、柔軟性と高血圧罹患との間には有意な負の関連(P for linearity = 0.007)があることを報告している。このコホート研究から「柔軟性」も健康リスクと関連することが明らかとなった。今年度は、これまで健康関連体力としてエビデンスの少ない「柔軟性」について文献レビューを実施した。 当初予定していた計画を遂行できているが、コロナ禍の影響により研究成果について海外での発表をすることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策としては、当初予定していた海外渡航の機会が困難な状況のため海外渡航は中止し、文献レビューの範囲を拡大した研究課題を実施することとする。新規予防法開発のための疫学研究として、柔軟性を向上するための運動であるストレッチングや柔軟性の評価に焦点を当てた文献レビューの実施や体力測定データを利用したフィードバックツールの検討を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により当初予定した海外渡航費や国内旅費の支出が無くなり、次年度に繰越したため次年度使用額が生じた。次年度は海外渡航の計画を中止し、繰越分は国内旅費、文献レビューや柔軟性評価、フィードバックツールの検討に関する物品や役務、英文校正等の支出として使用する予定である。
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