2021 Fiscal Year Research-status Report
思春期の慢性ストレスによる不安やうつの予防につながる運動トレーニング条件を探る
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19K11598
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
丹 信介 山口大学, 教育学部, 教授 (00179920)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 思春期 / 慢性ストレス / 運動トレーニング / 海馬 / 扁桃体 / ストレス性高体温 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度、思春期の慢性ストレスがストレス性高体温ならびに不安やうつとの関連が指摘されている脳領域である海馬および扁桃体の容積に及ぼす影響とそれらの影響に対する低強度運動トレーニングの効果について検討したので、今年度は、中・高強度運動トレーニングの効果について検討した。その結果、思春期に相当する6週齢のラットに、仰臥位姿勢での拘束ストレスを1日3時間、3週間にわたって負荷した際、ストレス性高体温(0.7~1度の体温上昇)が昨年度同様持続的に誘発されたが、その応答は、中・高強度運動トレーニング群においても、慢性ストレス負荷単独群と同様の変化を示した。この結果は、慢性ストレス負荷単独群と比べて、低強度運動トレーニングを加えた群の方が、その応答が低い傾向を認めた昨年度の結果とは異なるものであった。また、副腎重量も、昨年度同様、対照群に比べて慢性ストレス単独群および中・高強度運動トレーニングを加えた群ともに明らかに重かったが、その重量の増加に、中・高強度運動トレーニングの影響は認められなかった。したがって、思春期の慢性ストレス負荷により持続的に生じるストレス性高体温に対する運動トレーニングの影響は用いる強度によって異なり、低強度では、その応答を軽減する効果があるが、中・高強度では、そのような効果は認められないことが示唆された。脳の容積変化に関しては、対照群に比べて、慢性ストレス負荷単独群は、海馬容積が小さい傾向を示したが、基底外側扁桃体の容積については明らかな差は認められなかった。海馬および基底外側扁桃体容積に対する中・高強度運動トレーニングの影響については、現在、分析中である。なお、可能であれば、不安やうつ様行動についての検討も今年度行う予定であったが、それについては検討できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究実績の概要で述べたとおり、今年度、思春期の慢性ストレスが不安やうつとの関連が指摘されている脳領域である海馬および扁桃体の容積に及ぼす影響に対して、中・高強度の運動トレーニングがどのような影響を示すかという点については分析が終わっていない。また、今年度、可能であれば、不安やうつ様行動についての検討も行う予定であったが、検討できなかった。したがって、達成度としては、遅れていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
思春期の慢性ストレスが海馬および扁桃体の容積変化に及ぶす影響に対する中・高強度の運動トレーニングの効果についての分析を早急に終わらせるとともに、不安やうつ様行動の変化に対する低強度および中・高強度の運動トレーニングの影響について検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
可能であれば検討する予定であった慢性ストレスに伴う不安やうつ様行動に対する低強度および中・高強度の運動トレーニングの影響については検討できなかったことから、その分、物品費(消耗品費)の支出が少なくなった。また、中・高強度の運動トレーニングの実施に際しては、実験補助者の採用を予定していたが、コロナ感染症のリスクを踏まえて採用しなかったことにより、実験補助者に対する謝金の支出も生じなかった。また、学会発表は行ったが、コロナ感染症のリスクを踏まえてWebでの開催であったため、旅費の支出もなかった。 次年度は、低強度と中・高強度それぞれの運動トレーニングを実施し、慢性ストレス負荷による不安やうつ様行動に対する運動トレーニングの影響について検討を進める予定である。該当年度に支出できなかった実験補助者に対する謝金は、次年度の実験補助者に対する謝金に組み入れて使用する予定である。また、次年度にも、体温の測定や海馬および扁桃体の容積の算出を可能であれば予定しているので、その経費(消耗品費)は、次年度の物品費(消耗品費)に組み入れて使用する予定である。さらに、旅費についても、学会がWeb開催ではなく、現地での対面開催となれば支出を予定している。
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