2019 Fiscal Year Research-status Report
活動後増強を援用した新たな運動パフォーマンス改善法の開発
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19K11601
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Research Institution | National Institute of Fitness and Sports in Kanoya |
Principal Investigator |
金高 宏文 鹿屋体育大学, スポーツ・武道実践科学系, 教授 (40214928)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 活動後増強 / スプリント走 / 事前負荷運動 / 関節トルク / 転移 / 運動構造 / 実施条件 / スティック走 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、新たな運動パフォーマンスの即時的な改善法として、活動後増強のメカニズムを援用し、走運動(スプリント走)を例として、事前に行う負荷運動(事前負荷運動)を考案し、特定筋群の筋活動を活性化もしくは不活性化させて既習の運動フォームを変更させる改善法(仮称:事前負荷運動法とする)を明らかにすることを目的としている。 令和元年度は、大学陸上競技者数名を対象者に、既習したスプリント走に事前負荷運動がどのように影響するかを事例的に検討した。具体的には、動員する筋群やその出力範囲(関節角度等)を変えた数種類の事前負荷運動が、対象者の既習したスプリント走(50mのスプリントダッシュ)の運動パフォーマンスにどのように影響するかを検討した。その結果、事前負荷運動における動員する筋群やその出力範囲(関節角度等)を変えると、走行中のピッチやストライドに変化が生じることを確認した。しかし、走速度の向上は生じなかった。そこで,外的な運動課題となる走行時に獲得すべきストライドを示すスティック走を併用すること、事前負荷運動にスプリント走の運動構造も考慮した負荷を加え、より連続的な運動へと変化させたところ、ストライドもピッチも増加し、走速度も向上した。以上のことは、単に特定の筋群に事前負荷を加える事前負荷運動では運動パフォーマンスを高められないことを示している。つまり、事前負荷運動は、筋群に着目して負荷を加えると同時に、重心やSpring-Massモデルのような運動構造全体への負荷も考慮して考案されること、さらには事前負荷運動の波及効果を最大限に引き出せるスプリント走の実施条件を明らかにすることが重要なことを示している。 なお、購入した足底圧力センサーの不具合もあって、関節トルクの算出までには至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画において、令和元年から2年間で大学生及びマスターズの陸上競技者を対象として実験をすることとなっている。しかし、新型コロナウイルス感染症の予防対策により、年度後半に予定していたマスターズ競技者に対する実験が全く行えなくなった。さらに、関節トルク算出用に購入した足底圧力センサーの納品遅延や測定データ出力の不具合により、関節トルク算出が行えない状況となった。その点で、本研究は「やや遅れている」と判断される。 一方、少人数での検討を進めざるを得なくなり、当初の仮説よりも新たな実施条件で事前負荷運動を行うことやスプリント走の実施条件を考えることの重要性を事例的な検討から得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度に実施できなかった大学生及びマスターズの陸上競技者を対象として、動員する筋群やその出力範囲(関節角度等)を変えた数種類の事前負荷運動が対象者の既習したスプリント走の運動パフォーマンスにどのように影響するかを明らかにする。その際に、筋群に着目して負荷を加えると同時に、令和元年度に明らかにした重心やSpring-Massモデルのような運動構造全体への負荷も考慮した事前負荷運動も実験試技に加えることや、事前負荷運動の波及効果を最大限に引き出せるスプリント走の実施条件の有効性も検討する実験を行う。また、算出できなかった事前負荷運動中やスプリント走中の下肢関節トルクの算出も行う。 年度後半では、スプリント走で明らかになった事前負荷運動の実施条件等を手がかりに、走幅跳の踏切動作を題材に検証実験を行い、事前負荷運動の方法論を検討する。
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Causes of Carryover |
令和元年度は、マスターズの陸上競技者に対する実験が行えず謝金が不要となったこと、それにともない実験・データ分析等の研究補助を雇用しなかったこと、学会発表がWeb学会となり旅費の未使用により、次年度使用額が生じた。 令和2年度では、前年度の未実施の実験に対する謝金、研究補助等で用いる。
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