2019 Fiscal Year Research-status Report
サルコペニア予防を目指したビタミンDの骨格筋維持機構の解明
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19K11644
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
西川 美宇 富山県立大学, 工学部, 助教 (90749805)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ビタミンD / 骨格筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、食品因子でありながら医薬品としてのポテンシャルを持つビタミンDに着目し、運動機能維持に関わるビタミンDの新規作用機序を解明することを目的としている。骨形成作用を有するビタミンDの新規生理作用として「骨格筋機能維持作用」が報告されているが、その分子メカニズムは十分に明らかになっていない。ビタミンDの作用機序としては活性型ビタミンDのビタミンD受容体(VDR)依存的なgenomic作用が知られているが、VDR非依存的作用やリガンド非依存的作用も報告されている。本研究では、異なるビタミンDシグナルを欠損した3種の遺伝子改変ラット(①変異型VDR(R270L)導入、②CYP27B1-ノックアウト(KO)、③VDR-KO)の骨格筋における表現型およびビタミンD応答性を比較解析することで、運動機能維持に重要な新規ビタミンDシグナルの同定を試みた。 microCT装置による遺伝子改変ラットの骨格筋量の比較を行うとともに下肢骨格筋の組織学的解析を実施したところ、筋線維径や化学的筋損傷からの筋組織回復が系統間で異なる傾向が認められ、握力測定試験においても系統差が認められた。骨格筋の表現型異常は遺伝子改変系統Aにおいて最も重篤であり、従来の活性型ビタミンDのVDR依存的作用(genomic作用)だけでなく、VDR非依存的作用などの新規ビタミンDシグナルが骨格筋機能維持に重要な役割を果たしている可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3つの遺伝子改変系統の下肢骨格筋組織学的解析および運動能力測定試験において、系統Aが最も重篤な症状を示すことを見出しており、当初の目的通り骨格筋形成に重要なビタミンDシグナルの推定に貢献している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は異なるビタミンDシグナルを欠損する3系統の遺伝子改変ラットの骨格筋表現型比較解析により、従来の活性型ビタミンDのVDR依存的(genomic)作用だけでなく新規ビタミンDシグナルが骨格筋機能維持に重要な役割を果たしている可能性を見出した。その一方で骨の機能性も骨格筋の発達維持に重要なファクターであるため、これらのラットで認められた骨格筋機能異常は、既に認められている骨表現型異常による二次的な影響である可能性も考えられる。今後は、骨形態異常が現れる前の幼若期および胎児期における表現解析も視野に入れて研究を推進したい。
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Causes of Carryover |
動物繁殖遅延による研究用試薬の次年度繰り越し分として使用する。
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