2020 Fiscal Year Research-status Report
様々な栄養状態における細胞内のタンパク質分解システムの新たな分子機構の解明
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19K11658
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
棚橋 伸行 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 准教授 (30511927)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | プロテアソーム / 分子集合 / ユビキチン / タンパク質分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロテアソームによるアミノ酸プールの恒常性維持に関与する分子機序を解明するために、2020年度は、脂質は一定にしてタンパク質と炭水化物の割合を変化させた3種類の餌と通常使用している餌(CE2)を2カ月及び6ヶ月間マウスに摂取させ、各餌の血液、肝臓、腎臓、脳を採取し、プロテアソームの機能解析を進めた。 その結果、1) 体重の変化は2ヶ月及び6ヶ月間飼育した場合共に、タンパク質含量が少ない餌において、CE2を含む3種類の餌より体重の増加が少ないことが認められた。2)肝臓と腎臓の重量は、2ヶ月及び6ヶ月間飼育した場合共に、タンパク質含量の少ない餌が他の3種類の餌より軽くなった一方、タンパク質含量の多い餌で6ヶ月間飼育した場合、腎臓の重量は他の3種類の餌より重くなった。2か月間飼育した場合の臓器に関しては、3)肝臓では、CE2摂取に比べ他の3種類の餌の方が、26S及び20Sプロテアソーム活性が低下することが判明した。4)脳においては、CE2よりタンパク質含量を少なくした場合、26S及び20Sプロテアソーム活性が増加することが認められた。5)腎臓においては、CE2よりタンパク質含量を少なくした場合もしくは多くした場合、26S及び20Sプロテアソーム活性が増加することが判明した。6)どの栄養状態でも、プロテアソームの分子サイズは変化しなかった。 以上より、摂取するタンパク質含量が異なることにより、26S及び20Sプロテアソームの活性が変動することが判明したことから、プロテアソームの活性は、摂取する栄養素の影響を受ける可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の研究計画として、脂質は一定にして、タンパク質と炭水化物の割合を変化させた3種類の餌と通常使用している餌(CE2)を2カ月及び6ヶ月間マウスに摂取させ、各餌の血液、肝 臓、腎臓、脳を採取して、各々の粗抽出液を用いて各解析を進めた。現在までの解析では2か月の組織において、プロテアソーム活性の変動及びプロテアソームの分子サイズの不変が再現性を含めて認められた。 しかし、1)6ヵ月間飼育した場合の組織のプロテアソーム活性の変化、b)2カ月及び6ヶ月間飼育した場合の組織のプロテアソームの分子形成に関与する因子を含めたサブユニット群の遺伝子とタンパク質発現、c) 2カ月及び6ヶ月間飼育した場合の組織のユビキチン化されたタンパク質の蓄積の有無についてなどの解析がほとんどできなかった。 さらに、現在の社会状況の影響で研究に関わる時間が減少したことも要因であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
プロテアソームによるタンパク質分解が細胞におけるアミノ酸プールの維持に重要であること、飢餓の際にアミノ酸の確保を行うタンパク質分解系であるオート ファジーがmTOR複合体1により抑制されることなどを考えると,細胞における2大分解系の使い分けを対比することが必要である。 そこで、1) 絶食状態下のmTor系(mTor-SREBP-Nfr1系)、PI3K-AKT系(PI3K-AKT-FOXO系)の遺伝子発現及びタンパク質発現、組織や血液中の遊離アミノ酸量を分析し、 プロテアソームの機能変化との関連性、さらにオートファージとの関係について解析する。 次に、栄養素の割合が異なる餌で得られた結果から、2)プロテアソーム系を制御しているシグナル伝達系に関わる機構、3) プロテアソームの機能変化に対してこれらに関わる遺伝子レベルの変化などについて解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
現在の社会状況の影響で研究に関わる時間が減少したためすべて使用することができなかった。翌年度は、通常通り進めることが可能であると考えており、生化学的解析及び遺伝子学的解析のキットや試薬等に使用する。
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