2019 Fiscal Year Research-status Report
ミネラルの吸収・代謝動態に対する脂質摂取の相互作用の分子基盤の解明と実践研究
Project/Area Number |
19K11670
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
新井 英一 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (60325256)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ミネラル代謝 / 腎臓 / 消化吸収 / カルシウム / リン / マグネシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性腎臓病の食事療法として、腎機能を保護するための炭水化物や脂肪の適切な摂取割合は未だ明確にされていない。食の欧米化が進み、肉類など動物性食品(タンパク質や脂質等)の摂取量が増加傾向にある。さらに技術の発達や食の簡便化に伴い加工食品が普及し、リンを含む食品添加物が広く用いられ、リン摂取増大が懸念されると同時に、カルシウムのみならずマグネシウムなどの摂取低下が指摘され、慢性腎臓病のミネラル代謝異常に対しても注意が必要である。「食事」は複数の栄養素を同時に摂取するため、特定の栄養素のみを評価するのではなく、他の栄養を同時摂取した際の複合的な評価が必要である。そこで本研究は、「高炭水化物食または高脂肪食摂取時におけるミネラルの吸収・代謝動態の評価」を目的とした。雄性SDラット(30匹)に、高脂肪食または高炭水化物食といった栄養素の比率および異なる脂肪酸の種類を組み合わせた飼料(炭水化物/脂質比率=HC:75/10, HF:45/40、およびカルシウム・リン摂取量を固定)を作成し供与した。数日間摂取させた時点でラットを代謝ケージに入れ、糞および尿を回収し短期的な出納試験を行った。糞中リン排泄量は、HF-SFA群がHF群に比して低値を示し、尿中リン排泄量は、HF-SFA群がHC群およびHF群に比して有意に高値を示した。一方、見かけのカルシウム吸収率は、HC群に比して、高脂肪食2群において低値を示した。さらに、糞中マグネシウム排泄量は、各群間で差異はみられなかったが、尿中マグネシウム排泄量は、HC群において、MCT群に比して有意に高値を示し、SFA群およびn-3PUFA群に比して高い傾向を示した。高脂肪食、特に高飽和脂肪酸食は高炭水化物食に比して、腸管におけるリン吸収を増大させることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度、健常動物および慢性腎臓病モデル動物を用いた試験を行う予定であった。慢性腎臓病モデルを作成に挑んだが、手技に問題があり、適切なモデル構築に至らなかった。そのため、熟練者に指導を仰ぎ、引き続き作成後に試験を遂行する。
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Strategy for Future Research Activity |
健常動物において、高炭水化物食または高脂肪食摂取時におけるミネラルの吸収・代謝動態に影響を及ぼすことが明らかになった。しかしながら、様々食事組成による影響について、十分に精査ができていないため、次年度以降取り組みを継続する。また、最終的にはヒトでの評価、さらには腎臓病患者を対象とした評価に繋げる必要があるため、今年度から健常者を対象とした、24時間蓄尿法を用いたミネラル出納の把握について、パイロットスタディを始め、評価法の構築に有効である可能性が得られたため、例数を増やしたヒト研究に取り組む予定である。
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