2020 Fiscal Year Research-status Report
オレイン酸によるがん細胞増殖機構を解明し健康科学に発展させる基盤研究
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19K11680
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
福嶋 伸之 近畿大学, 理工学部, 教授 (10254161)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | オレイン酸 / CD36 / Srcキナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
脂肪酸は、細胞膜構成成分や生体のエネルギー源として働いている。近年、細胞膜上に脂肪酸の受容体(FFAR1ー4)や輸送体(CD36など)が存在すること、脂肪酸により特異的な細胞応答が生じることなどが報告され、脂肪酸がシグナル分子として細胞の機能を調節していることが示されるようになってきた。われわれは、オリーブ油に豊富なオレイン酸(OA)がHNOA卵巣がん細胞の生存促進を示すことを見出した。これまで、OAによる細胞周期駆動(S期細胞およびM期細胞の増加)には、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)7、CDK1/2が関与すること、さらにSrcファミリーチロシンキナーゼがその上流で関わっている可能性を見出している。 本年度は、Srcファミリーキナーゼが実際にリン酸化されていることをウエスタンブロットにより見出した。続いて、CD36の関与が示されたため、shRNAによるCD36ノックダウン細胞を作成し、OAの効果が減弱するかどうかを調べた。しかしながら、CD36の遺伝子およびタンパクの発現が検出限界以下であり、ノックダウンの効果を検証するに至っていない。FFAR、CD36以外の分子の関与を検討することとした。 HNOA細胞以外でもオレイン酸による生存促進/細胞増殖促進が見られるかを調べたところ、RMG-1卵巣がん細胞でも同様の作用が見られた。CD36の発現が認められたため、HNOA細胞と同様のアプローチによりそのメカニズム検討を進めた。意外にも、HNOA細胞とは異なりCDK1/2の関与、チロシンキナーゼの関与が見られなかった。細胞種により、OA応答の細胞内メカニズムに違いがあることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
春先の新型コロナウイルス感染拡大のため、研究時間が十分に取れない時期があった。 CD36ノックダウン細胞の作成がやや遅れている。これは、CD36の発現に関する結果の再検討が必要となり、新たな標的探索も視野に入れる必要が出たためである。したがって、モデルマウスの作成の準備状況が整っていない。 チロシンリン酸化は抗体の特異性が広いため、関与するキナーゼの同定に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
CD36の関与がないことも想定し、今後、核内受容体やCD36様分子の関与などを考えた実験系を構築する。 リン酸化抗体を選定し、関与するキナーゼを同定していく。また、リン酸化タンパク解析ツールの変更などにより、検討を継続していく。 一方、GLUT転写調節機構については、作成したレポーターアッセイ用ツールを使用して、当初計画に従って解析を推進する。 RMG-1細胞を用いた検討を進め、普遍性と特異性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
CD36の関与を示す実験に時間がかかったため、その先の研究に必要なチロシンリン酸化解析ツールや株細胞樹立に必要な材料の購入に至らなかった。今後は、CD36以外の分子の解析に必要な材料購入のために、当該助成金を使用する。
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