2020 Fiscal Year Research-status Report
Effect of dietary fibers on the process of absorption and transfer to blood of the therapeutic agent for lifestyle-related disease: Investigation of drug-dietary fiber interaction.
Project/Area Number |
19K11681
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
岩崎 綾乃 摂南大学, 薬学部, 講師 (20319792)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 食物繊維 / 生活習慣病治療薬 / 遊離薬物量 |
Outline of Annual Research Achievements |
食品多糖類の食物繊維は生活習慣病の発症やそのリスク因子の減少に役立つとされ、いわゆる健康食品や保健機能食品にも利用されている。医薬品を服用する人がこれらの食品を摂取した場合、「薬と食物繊維の相互作用」について問題となることが考えられる。本研究では、生活習慣病の治療薬と食物繊維の相互作用を検討する。 2020年度(令和2年度)は、これまでの研究結果をまとめ学会発表を行う予定であった。その内容は、生活習慣病にかかる薬物(高血圧治療薬、血糖降下薬、高脂血症治療薬)と食物繊維の混合による遊離薬物量の変化についてである。研究の結果、遊離薬物量への食物繊維による影響は、食物繊維の種類のみに依存せず、薬と食物繊維の組み合わせおよびそれらが存在する液のpHも影響することが明らかになった。このことから、生活習慣病の治療薬を服用中に食物繊維を含む健康食品等を摂取する際には注意が必要であると考えられることを報告予定であった。学会要旨の提出まで行ったが、COVID-19拡大のため学会開催が中止となり発表することができなかった。加えて、2020年4月の緊急事態宣言発出下、大学への出勤調整があり、細胞培養を伴う研究等を一時止める必要が生じた。実験は21日間の細胞培養後に薬物を添加し行う方法のため、培養の一時停止の影響は大きく、研究を進めることができなかった。 しかし、研究を遂行する上での課題として2019年度に挙がった、「薬物と食物繊維の混合による遊離薬物量を調べる試験にこれまで用いていた分画分子フィルターが製造販売中止となった問題」について検討を行うことが出来た。代替製品を使用して、これまでの実験結果と比較し、代替製品でも同様の結果を得られることが確認できた。この問題点についての検討は、当初、細胞培養を伴う実験と並行して進める予定であったが、培養実験が出来ない期間を利用し解決ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年度までに生活習慣病の治療に用いられる薬物と食物繊維を混合した時の遊離薬物量の変化を調べ、糖尿病治療薬のメトホルミンとアルギン酸ナトリウムの組み合わせに焦点を絞ることができた。そして食物繊維による薬物輸送量の変化を調べるために細胞を用いた実験を進めてきた。しかし、2020年度は緊急事態宣言発出に伴い、細胞培養を止める等の必要が生じ、細胞を用いた輸送試験を最適な条件下で効率よく行うことができなかった。さらにCOVID-19拡大により、予定していた学会が中止となり学会発表もできなかったことから、順調とはいえない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
糖尿病治療薬のメトホルミンに着目し、検討する食物繊維の種類を変えて、細胞実験を行うことを考えている。また、食品多糖類で食物繊維のひとつであるアルギン酸ナトリウムを含む医薬品もあることから、アルギン酸ナトリウム含有医薬品との併用によるメトホルミン輸送量の変化も確認をする予定である。これらの結果については、再現性も含めて確認する予定である。In vitro試験で、食物繊維による薬効発現への影響をより深く検討する必要性を見出すことができた場合には、ラットに食物繊維と薬物を経口投与し、薬物の血中濃度を測定し、相互作用をin vivoにおける薬物動態の観点から考察する予定である。 研究を遂行する上での課題としては、研究に使用するプラスチック製品や手袋等が必要な時期に手に入れることが出来ないことである。現時点でもこれまで使用していた製品が納入時期未定として代替品の提案を受けている。現在、ストックの中で研究を行っているが、今後も物品の提供が滞る可能性があり、危惧している。発注を前倒しで行うことで、研究遂行に必要な物品の不足を回避する予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度の経費使用時には、実験計画に従い物品購入を行った。しかし、COVID-19拡大にかかる緊急事態宣言発出による通勤の中断や大学業務である講義が遠隔授業になったことに伴う準備等で、研究に携わる時間が極端に不足してしまったことから、研究にかかる物品購入が出来なかった。また、学会発表を行う予定であったが、開催が中止となり、予定していた発表に関する予算の遂行もできなかった。加えて、研究に必要なパソコンの発注を行ったが、通信電子機器の世界的な需要拡大により部品の製造供給が追い付かず、年度内納期に間に合わない旨、発注業者先から連絡があり、購入予定額がそのまま繰り越しとなってしまった。 使用計画として、次年度においても培養製品や器具購入が引き続き必要である上、手袋、プラスチック製品は価格が高騰しており、繰り越し金額もそちらに充填予定である。さらにこれまでの成果を次年度には論文発表すべく、その作成に係るその他の費用に使用する予定である。
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