2020 Fiscal Year Research-status Report
糖質制限高脂肪食は侵襲時の生体機能維持になぜ有用なのか?-機序解明の基礎的研究―
Project/Area Number |
19K11688
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村越 智 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (10647407)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 糖質制限高脂肪食 / 腸管虚血再灌流 / 侵襲 / 一酸化窒素 / 炎症性サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
糖質制限高脂肪食を基本とする食習慣が手術や重症外傷などの侵襲時の生体反応にどのような影響を及ぼすのかは明らかではない。一方、研究代表者らの研究では長期間の糖質制限高脂肪食の摂取が普通食摂取に比較して、侵襲を受けた時の生体機能維持に好影響をもたらすことを示唆する結果を得ている。この結果を踏まえ、糖質制限高脂肪食の長期摂取が侵襲時の生体反応をどのように修飾して生体の機能維持に好影響を与えるのか、その機序を明らかにすることを目的として本研究を立案・施行した。 手術侵襲モデルや重症外傷モデルとして、一般的なマウス腸管虚血再灌流モデルを使用した。また、糖質制限高脂肪食(脂質60%、炭水化物21%)および普通食(脂質16%、炭水化物65%)をマウスにそれぞれ摂餌させた栄養管理モデルを用いて研究を施行した 初年度の研究では糖質制限高脂肪食摂取が生体侵襲時において循環動態維持に有用であり、また腸管組織保護作用もあることも明らかになった。 今年度は循環動態維持の機序を探るため、微小循環の維持と関連する一酸化窒素(NO)濃度やNO合成酵素発現に着目して検討を行った。その結果、マウス腸管虚血再灌流モデルにおいて糖質制限高脂肪食摂取群では普通食摂取群に比べ小腸組織中の誘導性NO合成酵素の発現が抑制され、NO の過剰産生が抑えられることが生体侵襲時の循環動態の安定の要因の一つであることを確認した。また、虚血再灌流後の血清中や小腸組織中の炎症性サイトカイン濃度の上昇は糖質制限高脂肪食摂取群では普通食摂取群に比べ低値であることを確認したが、これは腸管組織保護の一つの要因と考えられる。糖質制限高脂肪食は生体侵襲時における血行動態安定作用や腸管粘膜保護作用があるがその機序の一部が明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス栄養管理モデルおよび侵襲モデルを用いて、糖質制限高脂肪食摂取が生体侵襲時において循環動態維持に有用であり、また腸管組織保護作用もあるが、これらの機序の一部について明らかにすることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
腸管組織保護作用については免疫担当細胞やサイトカインとの関連に着目してさらに機序解明を推進する。あわせて細胞内炎症シグナル伝達の変化についても解析を進める。また、全身の脂肪組織関連サイトカイン産生に糖質制限高脂肪食摂取が影響し、侵襲時の生体反応を修飾しているのではないかと考え、その仮説について検証を進める。さらに侵襲の前後での腸内細菌叢の変化の有無を比較検討し、生体反応の修飾に腸内細菌叢が関連しているかについても評価を進める。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:解析する組織処理増加に対応するため携帯型ホモジナイザーを増備する費用を計上していたが、他施設の機器の借用が可能となり、購入せずに研究が遂行できた。また、令和2年度は社会情勢の変化により学会参加回数が減ったことに伴い、使用計画に計上していた旅費などが抑えられたため。 使用計画:研究推進のための試薬(サイトカイン測定用試薬、タンパク解析用試薬、抗体、細胞維持・分散用試薬)、単回使用実験器具および実験用動物の購入に用いる。また、国内・外の研究動向調査や研究成果発信のための学会参加旅費あるいは研究成果を英文専門誌に掲載するための英文校閲費としても用いる。
|
Research Products
(7 results)