2019 Fiscal Year Research-status Report
低栄養進行下での運動誘発性貧血発症機構の検証と栄養科学的アプローチ法の探索
Project/Area Number |
19K11695
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
小林 ゆき子 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 助教 (10381930)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スポーツ貧血 / 運動性溶血 / 低栄養 / 摂食制限 / 高強度運動負荷 / 鉄代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高強度運動により摂食量が低下した状態下もしくは消費エネルギー量に見合わない低摂食量の状態下での鉄代謝変動についてラットを使って観察することを目的とした。 Wistar系雄性ラット4週齢24匹を用い、トレッドミル走行馴化後、20%カゼイン食自由摂食群(C群、n=6)、7日間運動負荷+20%カゼイン食自由摂食群(E群、n=6)、C群の摂食量の8割給餌群(C8群、n=6)、7日間運動負荷+C群の摂食量の8割給餌群(E8群、n=6)の4群に分けた。運動負荷はトレッドミルを用いて30m/分で1日1回30分間で実施した。 C群とE群の血漿中GLU濃度は同程度であったが、C8群はC群に比べて低値傾向であり、E8群はC8群と同程度であった。また、E群およびE8群の血漿中TG濃度はC群に比べて有意に低値を示し、E8群とC8群は同程度であったことから、食事量の減少にともない糖質および脂質の利用が進んだと考えられる。Hb濃度、Ht値およびRBCは、E群、C8群およびE8群いずれもC群と比べて有意な差は認められず、血球は維持されていた。E群の血清鉄濃度、トランスフェリン飽和度、肝臓鉄量および血漿ヘプシジン濃度はC群に比べて低値であり、食事鉄の取り込み量減少に対応するために血清鉄が利用され、貯蔵鉄の利用促進によりヘプシジン発現が抑制されたと考えられる。E8群では、C8群に比べて血清鉄濃度およびトランスフェリン飽和度が低値であったことから、食事鉄減少に加えて鉄の需要や排泄量増大による血清鉄利用がさらに促進された可能性があり、E8群の肝臓鉄量とヘプシジン発現がC8群に比べて低値であったと考えられる。したがって、摂食量制限下で高強度運動を行うと、食事鉄減少および運動による鉄需要や排泄量増加に伴い、血球維持のために鉄代謝が変動することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
今回自由摂食の8割食給餌を背景とした高強度運動下での鉄代謝変動が観察できたので、例えば7割食給餌といったさらに摂取鉄量が減少する状況や、高強度運動下では摂食量が1割減少することが確認されたが、運動を負荷しない状態での9割食給餌の場合での鉄代謝について観察を進める計画である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大防止のために参加予定の学会に参加することが叶わなかったため。次年度の論文投稿に向けた英文校正や投稿料として使用していく計画である。
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