2019 Fiscal Year Research-status Report
胎生期の葉酸過剰による代謝異常誘導機構:腸バリア機能とDOHaDとの関連
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19K11696
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Research Institution | Jumonji University |
Principal Investigator |
金高 有里 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 准教授 (80420909)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 禎子 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 教授 (60382438)
田辺 賢一 名古屋女子大学, 健康科学部, 講師 (60585727)
望月 和樹 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (80423838)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | モノグルタミン酸型葉酸 / DOHaD / 腸管バリア機能 / 妊娠期栄養 / フラクトオリゴ糖 / インスリン抵抗性 / 腸内環境 / GLP-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
受精前後の栄養環境が、成人期の生活習慣病発症リスクに影響する可能性が指摘されている(Developmental Origins of Health and Disease(DOHaD)学説。研究代表者は科研費若手B23700920において、マウスを用いて妊娠期におけるモノグルタミン酸型葉酸の過剰摂取が仔に及ぼす影響を検討し、以下の結果を得た。 1.葉酸過剰による胎仔肝臓のインスリン分泌遺伝子および免疫応答関連遺伝子の発現低下。 2.葉酸過剰による出生仔のインスリン分泌能の低下、肝臓の脂肪蓄積遺伝子の発現増大。 これらの葉酸過剰投与による仔の免疫・代謝異常の生ずるメカニズムは不明である。近年、インスリン分泌や免疫機能の維持には腸内細菌叢が関与することや、仔の生活習慣病のリスクには、母獣の腸内細菌叢が強く関与することが報告されている。そこで、研究代表者は「妊娠期の葉酸過剰は腸内細菌叢の変化を生じその変化が、腸バリア機能に関与する腸の恒常性を破綻させ、胎仔のインスリン分泌能を抑制し、生活習慣病発症リスクを増大させる」という仮説を立てた。本研究では、その仮説を実証するために、マウスを用いて以下の検討を進めている。 2019年度は、出生後の腸のバリア機能の変化と腸恒常性や生活習慣病リスク(主に脂肪肝)との関連について検討するために飼育実験を行った。C57BL6Jマウスを用いて妊娠期モノグルタミン酸型葉酸過剰環境を設定し、出生した仔マウスを高脂肪高ショ糖(HSFS)食で飼育した。また、腸内細菌の影響を観察するため、これに難消化性糖質含有飼料で飼育する群を設定し、解析するサンプルを調製した。2020年度は、2019年度に調整したサンプルを用いて解析を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、妊娠期にモノグルタミン酸型の葉酸過剰摂取をした母獣から出生した仔マウスにおいて、離乳早期の耐糖能異常や、腸バリア機能の低下を検証し、離乳後の高脂肪食誘導性の脂肪肝、腸バリア機能の低下の促進作用について検討し、腸内細菌を活性化するフラクトオリゴ糖が上記の悪化を改善するかについて検証してきた。 飼育実験①では、妊娠0日目のC57BL6Jマウスを2群に分け、対照(CN:AIN-93G 葉酸含量2mg/kg)食、葉酸過剰(FA:葉酸含量40mg/kg)食を与え、自然分娩後はCN食に切り替えて、離乳後の生後28日目まで飼育した。飼育実験①の臓器および血液の解析は、(Ⅰ)基本パラメータとして、血液パラメータ(血糖、インスリン、中性脂肪)、病理(肝臓中中性脂肪、膵β細胞陽性面積等)を解析中である。(Ⅱ)腸バリア機能は、大腸を用いた反転腸管法による腸管のバリア機能の変化を検討してきた。(Ⅲ) mRNA発現解析(大腸、肝臓等)は、発現アレイとqRT-PCRにより検討中である。これらの結果の一部については、論文として公表に至った(Heliyon,6,4,2020,e03597)ところである。 飼育実験②では、出生仔に対する高脂肪食負荷の影響を見るために、生後28日目まで飼育①と同じ条件で飼育を行い、耐糖能異常を惹起させる高ショ糖・高脂肪(HSHF)食(たんぱく質15%,脂肪43%,糖質42%)で飼育した。生後28日目に各群半数のマウスに難消化性オリゴ糖であるフラクトオリゴ糖(FO)を添加したHSHF食を与えて100日間飼育し、解剖10日前に経口糖負荷試験を行った。解析については、現在進めているところである。 以上の状況により、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
妊娠期母獣におけるモノグルタミン酸型葉酸の過剰摂取が、仔のインスリン抵抗性や、肝臓の脂肪蓄積遺伝子の発現増大を導くメカニズムが、出生後の腸のバリア機能の変化によるものであるかについて検証を進めていく。 今後の方策としては、これまでの飼育実験において不足している検討数をさらに増やしていく。それと同時に、飼育実験①②における(1)基本パラメーターについての解析を続ける。さらに、(Ⅱ)腸バリア機能の検討を順次おこなっていく予定である。続いて、(Ⅲ) mRNA発現解析については、大腸のバリア機能関連遺伝子や肝臓の脂質代謝遺伝子の発現に焦点を当てていく。 次年度の解析達成目標としては、以下の2点に関して分担研究者と検討を重ね、飼育・解剖によって得られた臓器や糞便を用いた解析を進めていく。 1.腸内細菌叢の変化と大腸機能:定期的に採取した母獣と仔の糞便を検討し、腸バリア機能と関連する腸内細菌を同定していく。 2. (Ⅳ)エピゲノム解析:大腸のバリア遺伝子や肝臓のβ酸化遺伝子のヒストンアセチル化修飾が、胎生期の葉酸過剰によって変化するかを検討する。 以上の検討を進め、結果を整理する。まとめた結果は、学会発表および論文投稿によって結果の公表を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初は、母獣数として給餌内容の違いと雌雄ごとに各群5~6匹以上を確保することを計画していたが、動物室の停電や仔獣飼育中のネグレクトの発生状況により、n数を確保することができなかった。この部分については、次年度以降に使用していく。
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Research Products
(2 results)