2020 Fiscal Year Research-status Report
疲労および加齢、また、その相乗効果による脳の構造的・機能的変化の解明
Project/Area Number |
19K11708
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐々木 章宏 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (10711781)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 加齢 / 認知機能 / 脳 / MRI |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では疲労および加齢、またその相乗効果が脳構造と機能に及ぼす影響の解明を目標としている。2020年度はこれまでに行ってきた磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging, MRI)による脳画像計測と認知機能、質問紙調査の統合的なデータ解析を進めた。白質や脳全体(共に0.2%の減少率)と比べて加齢による影響が顕著であることが分かりました。さらにこの研究では近年開発された画像解析の新技術を導入することにより、灰白質内の髄鞘(グリア細胞によって形成)や神経突起(神経細胞の軸索および樹状突起)の密度が年齢依存的に増大すること、また脳体積の減少、髄鞘や神経突起の密度の増大はいずれも高次認知機能に関わる前頭前野や後部頭頂葉において顕著であることを初めて発見した。例えば、前頭前野には発話機能の中枢であるブローカ野があるほか、作業記憶や注意などにも関与する領域が存在し、後部頭頂葉には言語理解の中枢であるウェルニッケ野があるほか、社会的認知に関与する領域が存在することが知られている。また最近の研究から、加齢によるヒトの神経細胞の減少は僅かであることや、感覚的な経験や運動技能の学習によって成熟ラットの大脳皮質や白質の髄鞘化が進むことも報告されている。これらの知見を踏まえると、脳は加齢に伴う認知的な機能低下に抗して、髄鞘や神経突起密度の増大することで神経回路の機能を維持するためのレジリエントな変化を生じることが示唆された。また安静時の脳活動データを用いて、構造的変化が顕著であった言語機能に関わる脳領域間の機能的結合が加齢によって低下することも見出され、加齢に伴う脳領域間のネットワークが再編されていることが機能的結合の低下として現れたと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナの対策のため所属機関では外部被験者を対象とする研究活動の停止、縮小が余儀なくされた。そのため高齢者および慢性疲労者の追加データの取得が滞った。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は所属機関の研究活動が徐々に可能となっているが、対象者の選定に留意しつつ、慢性疲労者および高齢者を対象にしたMRI計測研究を実施する。それとともに、Human Connectome Projectで公開されたデータを活用した研究も並行して推進する。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症のパンデミックの影響により、参加を予定していた国際学会などがオンライン開催となり旅費が使用されなかったこと、外部被験者を対象とする研究活動が停止したため謝金などの使用がしょうじなかったため、次年度使用額が生じた。今年度に実施する被験者謝金と学術誌への論文掲載など成果発表の予算として使用する。
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] Age-related changes in cortical architecture and cognitive function.2020
Author(s)
Sasaki AT, Fukutomi H, Autio J, Watanabe K, Morito Y, Tajima K, Ebisu K, Iwasaki M, Mizuno K, Watanabe Y, Hayashi T.
Organizer
The Organization for Human Brain Mapping Annual Meeting
Int'l Joint Research
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