2021 Fiscal Year Research-status Report
2型糖尿病の高リスク疾患関連遺伝子による新しい病態と分子機構の解明
Project/Area Number |
19K11723
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
市川 弥生子 杏林大学, 医学部, 教授 (90341081)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粟崎 健 杏林大学, 医学部, 教授 (60359669)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 2型糖尿病 / 疾患関連遺伝子 / TBC1D4 / GLUT4 / ショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
2型糖尿病の発症は生活習慣以外に遺伝要因も大きく寄与することが知られており、2型糖尿病の疾患関連遺伝子バリアントは多数報告されている。本研究はその中でも、イヌイットにおいて2型糖尿病の発症リスクが高いTBC1D4遺伝子バリアントに注目し、臨床遺伝学的解析およびショウジョウバエモデルを用いた解析を行なった。 世界的に稀少なTBC1D4遺伝子バリアントを持つ日本人における臨床スペクトラムを明らかにすることを目的に、当科の家系ならびに日本人のバイオバンク(東北メディカル・メガバンク機構:ToMMo)から分譲された試料・臨床情報を用いて、日本人における臨床データベースを構築し、臨床情報の蓄積を行っている。現在までに、当科が見出した日本人1家系の当該遺伝子バリアント保持者、さらに日本人のバイオバンクから抽出された当該遺伝子バリアント保持者5名について、臨床情報を得ている。調査時点では、糖尿病を発症者は明らかではない。令和3年度においては、ToMMoからの新規検体の分譲はなかった。当科の家系については、発端者の臨床病態について、通年でフォローを行った。症状の増悪はなく経過した。 TBC1D4の分子機能と病態との関係をショウジョウバエモデルで解明することを目的とし、ショウジョウバエオルソログ遺伝子であるpollux(plx)遺伝子に着目して、plx突然変異やplx過剰発現やヒトR684X様の変異分子の影響を個体ならびに細胞レベルで解析する系の確立を行っている。令和3年度は新規のplx発現系統、ヒトR684X様plx発現系統、ショウジョウバエのグルコーストランスポーターGlutならびにトレハローストランスポーターTretとGFPの融合分子が発現できる系統の確立を行い、新たな実験系の整備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2型糖尿病の発症リスクに関与するTBC1D4の特定の遺伝子バリアントを持つ日本人を、当科の家系および国内のバイオバンク(ToMMo)において見出している。症例数が少なく、日本人における臨床像の傾向は明らかではないが、今後、症例数を増やして検討を行う。 新規に確立した、ショウジョウバエのグルコーストランスポーターGlutならびにトレハローストランスポーターTretとGFPの融合分子の発現誘導系統を利用して、幼虫の脂肪組織、唾液腺、筋肉等での発現を誘導して膜移行を評価できる系を確立した。さらに、これらを利用して、正常型PlxとヒトR684X様Plx(C末欠損型)のGlutならびにTretの細胞内局在に対する影響を解析した。発現させる細胞種により、かなりの頻度で致死性が生じてしまうために実験結果を慎重に吟味する必要が生じた。正常型Plxの強制発現はGlutとTretの発現を抑制する傾向にあることが示されたが、C末欠損型Plxについてはその効果について結論を得ることができなかった。正確な結論を得るために、発現時期を人為的に調整する系を利用するなどの工夫が必要であることが考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
1. TBC1D4 遺伝子バリアントを持つ日本人の臨床スペクトラム 当科が見出した日本人1家系の臨床情報に、東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)からの新たな分譲検体・情報を加えて、日本人における臨床データベースを構築していく。そして、この世界的に稀少なバリアントを持つ日本人の臨床像を世界に発信する。 2.ショウジョウバエを用いたTBC1D4の分子機構に関する研究 新規に作成したハエ系統を利用して、Glut, Tret の膜移行に関する正常型PlxならびにC末欠損型Plxの効果を再検討するとともに、Plx欠損による影響についても解析を行う。
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Causes of Carryover |
令和3年度も、COVID-19感染者数や濃厚接触者の増加により、診療および研究活動に制限があった。また、感染予防のため国内外の学会の現地参加を控えて、web参加としたため、旅費は発生せず、次年度使用額が生じた。令和4年度は、東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)から、検体・情報が新規分譲される可能性があり、該当検体の分譲費用、病態解析に、使用する計画である。
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