2021 Fiscal Year Research-status Report
アセチル化修飾によるmTORシグナルの陰陽制御機構と老化制御
Project/Area Number |
19K11726
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
安田 邦彦 帝京大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50278446)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大山 恭司 東京医科大学, 医学部, 准教授 (00255423)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インスリンシグナル / mTORシグナル / アセチル化修飾 / HDAC6 / 細胞老化 / マイクロRNA / 精子形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢化社会が進む中、我が国では健康長寿の延伸及び生活の向上を目指し様々な取り組みがなされている。高齢になるにつれ糖尿病のような生活習慣病やアルツハイマー病などの罹患率が増加するが、これらの疾患に共通するものとしてインスリンシグナル系が密接に関与していることがわかってきた。特にインスリンシグナル系の下流に位置するmTORシグナルはエネルギー代謝に加え、不良タンパク質を排除するオートファジーの誘導まで制御することから老化シグナルとして注目されている。本研究ではmTORシグナルの新規制御因子としてアセチル化修飾関連分子として脱アセチル化酵素であるHDAC6(mTOR抑制因子)及びアセチル化酵素関連分子であるMdm20(mTOR活性化因子))を見出したことから、これら分子によるmTORシグナル系制御の詳細な分子機構および老化に対する効果を明らかにすることを目的にしている。 本年度はアセチル化修飾によるmTORの老化制御への効果を調べる目的で、細胞老化に対する影響について実験を行った。細胞老化は発生段階でも作用することから、精巣及び精子の成熟過程に注目し、mTOR及びアセチル化修飾の発現パターンを調べた。その結果、mTORが精子の成熟過程の初期段階に作用し、その後Mdm20により抑制されることが示唆された。さらに老化細胞から分泌されるSASP因子は慢性炎症を誘発し老化を促すが、その抑制因子の一つとしてmiR-142が森らにより報告された。森らとの共同研究でmTOR及びMdm20とmiR-142との関係について調べた結果、mTORの共因子であるRictor及びMdm20がmiR-142の下流に位置することが明らかとなった。今後も引き続き精巣・精子の成熟過程や慢性炎症といった細胞老化制御に対するアセチル化修飾を介したmTORシグナルの関与について解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度でも前半は前年度の遅れが引き続き影響を受けていたが、中盤になりようやく研究が再開できたという状況。本年度の研究は大阪市立大学及び長崎大学での共同研究がメインであったため、新型コロナウィルス感染拡大の影響により相互の研究受け入れ状況が異なり、通常のようには進まなかったのが遅れの大きな原因となった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は新たに大阪市立大学の國本浩之助教及び長崎大学の森亮一准教授による研究協力の結果、アセチル化修飾を介したmTORシグナルの細胞老化への効果についての研究を始めることができ、足がかりとなる成果もいくつか得られた。この結果を踏まえて、今後はmTORシグナルによる細胞老化制御に対する詳細な解析を進めると共に、アセチル化修飾を介した翻訳後修飾の生物学的な意義についても追求していく予定である。
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Causes of Carryover |
一部は前年度同様、新型コロナウィルス感染拡大による緊急事態宣言やまん延防止措置等の影響で共同研究先との研究が予定通り進まなかったことが大きく影響している。本年度は特に共同研究先での研究がメインであったこともあり、両施設間の調整などが思うように進まなかったことが要因の一つである。次年度が最終年度となるので可能な限り前もって研究の予定を立て、実行できるように準備を進めているところである。
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