2022 Fiscal Year Research-status Report
アセチル化修飾によるmTORシグナルの陰陽制御機構と老化制御
Project/Area Number |
19K11726
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
安田 邦彦 帝京大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50278446)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大山 恭司 東京医科大学, 医学部, 准教授 (00255423)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | インスリンシグナル / mTORシグナル / アセチル化修飾 / 細胞老化 / NGS解析 / エイコサノイド / Mdm20 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国は高齢化に伴い糖尿病といった生活習慣病やアルツハイマー病などの罹患率の増加が大きな社会問題となっている。この問題解決として健康長寿の延伸及び生活の向上を目指す必要があり、そのためには老化のメカニズムの解明が必須となる。これまでの研究でカロリー制限による抗老化作用及び寿命延伸作用として、インスリンを起点としたAkt-mTORシグナル系、さらに長寿遺伝子と呼ばれるサーチュインによる制御、加えて細胞老化(老化細胞から分泌されるSASP(細胞老化関連分泌物質)による慢性炎症が加齢性疾患の増悪化)の3つの主要な経路の関与が明らかになってきた。本研究はmTORシグナルの新規制御因子としてアセチル化修飾関連分子として脱アセチル化酵素であるHDAC6(mTOR抑制因子)及びアセチル化酵素関連分子であるMdm20(mTOR活性化因子))を見出したことから、これら分子によるmTORシグナル系制御の詳細な分子機構および老化に対する効果を明らかにすることを目的にしている。 昨年度はアセチル化修飾による細胞老化に対する影響について検証した結果、Mdm20が新たに細胞老化を誘発するSASP因子の抑制因子の下流に位置することを明らかにした。本年度はMdm20がmTORシグナルだけでなく細胞老化も含めた生体老化全体に対する影響について網羅的に解析を行った。Mdm20発現抑制細胞を用いてNGS解析を行い、遺伝子発現パターンの変化について検証した。その結果、炎症時に増加するエイコサノイドの生合成系の遺伝子発現パターンに違いが認められた。細胞老化では慢性炎症を誘発することからMdm20が細胞老化にも密接に関わっていることを示唆している。今後は培養細胞レベルでエイコサノイド生合成や脂質代謝に対する作用点を明らかにし、さらに個体レベルでの影響についても遺伝子改変マウスを用いて検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ここ数年のコロナ禍の影響で共同研究先との研究交流に制限があり予定していた研究が進まなかったが、本年度は研究計画を一部変更し、各施設間を頻繁に往来しなくてもよい研究を新たに組み直した。NGS解析を受託依頼するなど老化という生命現象に対して網羅的に検証し、データサイエンスを中心とした研究を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度ではMdm20発現抑制培養細胞での遺伝子発現パターンの変化について次世代シークエンスを用いて網羅的な解析を行った。その結果として、老化を促進する要因の一つである慢性炎症に関わるエイコサノイドの生合成系に変化があることが見出された。今後は実際にMdm20がエイコサノイド生合成系にどのように関与しているのか、そのメカニズムについて詳細に解析を行い、細胞老化に対する影響について明らかにする。また老化という生命現象に対する効果を検証するためには個体モデルが必須であり、現在、本研究計画と並行してMdm20のコンディショナルノックアウトマウスを作成しており、培養細胞から得た結果をもとに個体モデルにおける研究へ随時移行していく予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で共同研究を実施する上で、施設間を頻繁に往来できなかったこともあり、従来の研究計画を一部変更し、各施設間を頻繁に往来しなくてもよい研究を新たに組み直したことが要因の一つである。2023年度は新型コロナウィルスの制限がなくなることから、従来の研究を再開するとともに新たに得られた知見をもとにアセチル化修飾による老化シグナル制御の分子メカニズム解明に向けて取り組む予定。
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