2019 Fiscal Year Research-status Report
血管内皮機能に着目した糖尿病性血管障害発症機序の性差の解明と性差医療への応用
Project/Area Number |
19K11731
|
Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
竹之内 康広 川崎医科大学, 医学部, 助教 (30582233)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 安雄 川崎医科大学, 医学部, 教授 (80293877)
坪井 一人 川崎医科大学, 医学部, 講師 (80346642)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 性差 / 糖尿病 / 血管機能 / ヒスチジン脱炭酸酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの疾患は生物学的性差により多大な影響を受ける。糖尿病合併症もその一つであり、糖尿病を起因とした血管機能障害によって発症する脳梗塞や心不全などの心血管疾患にも性差が存在することが知られている。心血管疾患リスクは女性の方が男性に比べ低いことが知られているが、糖尿病を併発している場合にそれは逆転し、女性の方が男性よりも高くなることが報告されている。心血管疾患リスクの性差については疫学的報告が多くなされているにも関わらず、性差が生じる原因の詳細なメカニズムや、性別に応じた治療方法についてはほとんど明らかになっていないのが現状である。本研究ではそのメカニズムを解明し、糖尿病治療および性差医療への基盤を確立することを目的としている。 ストレプトゾトシン誘発1型糖尿病マウスおよび自然発症2型糖尿病モデルKKAyマウスから摘出した腎臓と胸部大動脈におけるヒスチジン脱炭酸酵素(HDC) mRNA発現をリアルタイムPCR法で検討したところ、健常マウスでは雄に比べ雌のマウスで発現量が高く、糖尿病モデルマウスにおいてはその発現量の優位性が消失することを明らかとした。HDCはヒスチジンからヒスタミンの生成を触媒する酵素であり、主にマスト細胞に発現が認められるが、血管内皮細胞での発現も確認され、血管の恒常性を保つことが報告されている。ヒスタミンは胃酸分泌やアレルギー反応のケミカルメディエーターとして知られているが、平滑筋収縮や血管透過性亢進など血管機能に関与する作用も有している。最近、心不全・腎障害モデルマウスにおいてHDCのノックアウトによりヒスタミンが欠乏し、病態を悪化させる報告がされた。また、女性ホルモンであるエストロゲンがHDC発現の誘導をすることも報告されている。この雌雄および糖尿病病態によるHDC発現の違いが、糖尿病合併症の性差が生じる原因であることが考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は糖尿病によって性差が生じるシグナル分子とそのメカニズムを解明することを目的としている。今年度はそのシグナル分子の候補の一つとしてHDCを発見した。健常マウスの胸部大動脈におけるHDCの性差が糖尿病時に消失するという結果を踏まえ、次年度以降の研究を進めていく予定である。よって、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
胸部大動脈において性差が明らかとなったHDCについて検討を行う。血管内皮細胞のHDCを介した血管機能やそのシグナルについて明らかにすることにより、糖尿病合併症における性差を解明していく予定である。
|
Causes of Carryover |
3月に開催予定であった学会で成果発表を行い、その旅費と参加費を支出する予定だったが、学会が誌上開催となり、旅費の支出がなくなったため次年度使用額が生じた。発生した次年度使用額は、糖尿病による性差のシグナル分子として本年度発見したHDC関連の実験試薬に充てる予定である。
|
Research Products
(5 results)