2020 Fiscal Year Research-status Report
コレステロール摂取が非アルコール性脂肪肝の進展と発癌に及ぼす影響とその機序の解明
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19K11743
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
三宅 映己 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (80573659)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コレステロール摂取 / 非アルコール性脂肪性肝疾患 / 発癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
体内へ吸収されるコレステロールは、食事からの吸収が約20%と少なく、残りの約80%は腸肝循環によるコレステロール再吸収に依存している。コレステロール摂取の増加は、肝硬変や肝臓癌など肝疾患のリスクを上昇させ、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)における脂肪沈着の程度を増加させることが報告されている。また、胆管結紮や化学物質による肝障害モデル動物においても、食事中のコレステロール含有量の増加が、肝炎の増悪や肝線維化の進展を誘導し、その機序に肝臓におけるインフラマソームや星細胞の活性化が関与することが報告されている。しかし、食事由来のコレステロールが、直接肝内の脂質代謝や発癌に及ぼす機序は未だ不明である。 本研究では、高コレステロール含有高トランス脂肪酸食、高トランス脂肪酸食、コントロール食でマウスを飼育し、3か月後、血清、肝臓、内臓脂肪組織、糞便を採取した。現在までの解析にて、体重、全脂肪量、肝重量がコントロール食に比較して、高脂肪食群で増加していたが、コレステロールの負荷よりさらに増加がみられた。血液生化学検査上は、コレステロールの負荷により総コレステロール値、遊離コレステロール値、ALT値の上昇がみられたが、中性脂肪値は軽度上昇に留まった。一方で、肝組織中はコレステロール負荷により、総コレステロール値、遊離コレステロール値、中性脂肪値、総胆汁酸値に増加がみられた。また、肝内のコレステロール代謝因子の検討では、コレステロール負荷によりCYP27A1の低下がみられた。血液、胆汁の胆汁酸分画の検討を行ったところ、コレステロール摂取により胆汁酸分画の変化が確認されている。また、高コレステロール食開始12ヵ月で肝臓内の発癌の増加を確認できている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在、高コレステロール食給餌にて肝臓内で上昇がみられた因子について、in vitroで確認を行っている。肝癌培養細胞株にコレステロールを添加し、コレステロール代謝に関係する因子の測定を行っていが、条件設定が合わず、現在十分な結果が得られていない。条件の変更を行いながら、現在最適の条件を探している。
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Strategy for Future Research Activity |
腸内細菌叢の変化を確認し、コレステロール代謝との関連を確認する。また、高脂肪食給餌後12カ月後の発癌した肝臓を用いて、癌関連遺伝子のPCR arrayを行い、発癌に関するkey moleculeの遺伝子発現を絞りこみ、Western Blotで確認する。 その後、肝癌細胞株を用いて、上記で絞り込んだ肝代謝関連key moleculeを、肝癌細胞株で過剰発現、もしくは発現抑制を行い、細胞増殖(proliferation assay)やapoptosisへの影響など、癌進展に関わる形質変化について解析する。その結果をもとにノックアウトマウスを作成し、肝臓の脂肪沈着、炎症・線維化、発癌へ及ぼす影響を確認する。 次に薬剤を用いた介入実験を行う。コレステロールトランスポーターを阻害しコレステロールの吸収を抑制した後、肝臓の脂肪沈着の程度、炎症・線維化の程度、肝臓内のコレステロール量や胆汁酸量、脂肪酸代謝、コレステロール代謝の変化、肝線維化と発癌抑制の有無を比較する。また、抗生剤を用いて腸内細菌叢を変化させ、肝臓の脂肪沈着量、炎症・線維化の程度、肝臓内のコレステロール量や胆汁酸量、脂肪酸代謝、コレステロール代謝の変化を比較検討する。最後に、NAFLD患者の生検組織を用いて、動物実験と培養細胞実験で得られた肝脂肪沈着、肝炎、肝線維化、肝発癌に関するkey moleculeの発現を確認する。
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Causes of Carryover |
次年度は実験用の物品購入に研究費を使用する予定。特に培養細胞を用いた実験に必要な物品と、マウスを飼育するための特殊食に多くの研究費をあてる必要がある。
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