2020 Fiscal Year Research-status Report
Anisomycinによる細胞老化誘導に関する基礎研究
Project/Area Number |
19K11749
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
牛島 弘雅 岩手医科大学, 薬学部, 助教 (90509043)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞老化 / Anisomycin / RNA-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、Anisomycinによって誘導される細胞老化現象を癌に対する防御・除去の面から捉え、細胞老化を積極的に誘導する新規分子機構の探索及び老化細胞の分子生物学的特徴を明らかにすることを目的としている。 研究計画の2年目に当たる令和2年度における研究では、前年度に引き続き大腸癌細胞株であるDLD-1細胞に対して所定の濃度のAnisomycinを作用させ、RNA-seq解析を行った。疑似時系列的な遺伝子発現パターンを解析するために、通常の細胞老化が観察される24時間時点よりも短い作用時間における細胞サンプルも併せて調製することとした。 RNA-seqにより得られた配列データを元にマッピング及びリードカウントを行い、発現変動の見られた遺伝子をリストアップした結果、複数の癌抑制遺伝子、既知の細胞老化マーカーの発現変動を確認できた。癌抑制遺伝子(ATF3など)の発現量は、Anisomycinを作用させてから数時間のうちに顕著に増加し、その後経時的に減少することがわかった。また、細胞老化マーカーの一部(p16遺伝子)は、プロモーター領域がhypermethlationの状態にあるため、Anisomycinを作用させて観察された細胞老化現象がpartialな細胞老化である可能性が示唆された。 Anisomycinによって発現量が増加していた癌抑制遺伝子及び細胞老化マーカーのinteractionや調節機構の解明を次年度の研究課題と設定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Anisomycinによる細胞老化誘導への関与が示唆される新規miRNAを昨年度に同定することができたが、これらのmiRNAを単独で発現させただけでは細胞老化現象は確認することができなかった。そのため、それらmiRNAの機能を明らかにするには至っていない。一方、RNA-seq解析及びタンパク質相互作用データーベースの探索から、癌抑制遺伝子の発現量増加とリンクするストレス応答遺伝子群を新たに見出すことができ、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
Anisomycinを作用させた場合の癌抑制遺伝子の発現増加と既知の細胞老化マーカーとの相互作用及び調節機構について、引き続きRNA-seq解析を行う。また、既存の代表的な細胞老化誘導の手法(継代数を増やす、放射線照射、Doxorubicin処理、癌遺伝子の強制発現等)との比較を行い、Anisomycinによる老化誘導に特徴的なマーカーとなり得る遺伝子の有無を確認する。
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Causes of Carryover |
米国での国際学会及び国内の学会に参加予定であったが、コロナ禍のためいずれもオンライン開催となった。そのため当初計上していた学会旅費の支出がほぼ必要無くなったため次年度使用額が生じた。今年度も学会旅費は同様の対応となる可能性が極めて高いので、論文投稿及びrevise実験用の試薬購入等に必要な支出を考慮して計画的に研究費を使用する。
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