2019 Fiscal Year Research-status Report
単球・ミクログリア由来蛋白を標的とした生活習慣病に伴う認知症予防法の確立
Project/Area Number |
19K11760
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Research Institution | Department of Clinical Research, National Hospital Organization Kyoto Medical Center |
Principal Investigator |
井上 隆之 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 内分泌代謝高血圧研究部, 研究員 (50581386)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅原 哲子 (佐藤哲子) 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 内分泌代謝高血圧研究部, 研究部長 (80373512)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肥満 / 糖尿病 / 脳内炎症 / 脂肪組織 / ミクログリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では肥満・糖尿病性認知症に関わる新規候補分子として、特に脳内炎症や動脈硬化の鍵となる単球・ミクログリア機能(M1/M2極性・Triggering receptor expressed on myeloid cells 2(TREM2))に焦点を当て、生活習慣病に伴う認知症の進展機序の解明と予防法・治療戦略の開発を目指し、2019年度は下記実績を得ている。 ①野生型マウスにおいて、TREM2が脳、単球、腹腔マクロファージに加え、肺や脂肪組織でも発現する事を見出し、またdb/db肥満マウスの海馬・脂肪組織(皮下・内臓)では、炎症指標(TNF-α等)と伴にTREM2の発現亢進を認めた(日本肥満学会, 2019)。以上より、糖尿病・肥満に伴い、脳内ミクログリアのみならず脂肪組織においてもTREM2発現が亢進し、M1/M2極性悪化と全身の慢性炎症に繋がる可能性が示唆された。 ②脳アミロイド血管性認知症マウスモデルの検討では、認知症予防薬候補として着目しているフラボノイド・タキシフォリン投与により、脳・海馬でのTREM2発現抑制を認め、それに伴い、ミクログリア活性化、炎症やアポトーシスが抑制され、認知症改善作用に繋がることを報告した(Proc Natl Acad Sci USA 2019)。本研究より、ミクログリアのTREM2(M1/M2極性)が認知症進展の起点となり、また認知症予防の為の治療標的になる事が示唆された。 ③現在、上記知見を踏まえTREM2欠損マウスを作製し、老化促進認知症モデルマウス(SAMP8)と伴に、高脂肪食負荷試験を施行し、肥満・糖尿病に伴う認知症の病態解析を進めている。さらに、細胞株(マウスミクログリアMG6、マウス線維芽細胞3T3-L1)やマウス初代細胞(腹腔Mφや脂肪組織)を用い、生活習慣病に伴う認知症の進展機序とTREM2の病態生理学的意義の解明を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、生活習慣病に伴う認知症の進展機序の解明と予防法の確立に向けて、下記基礎研究を推進し、特に単球・ミクログリア機能(M1/M2極性・TREM2)の認知症進展への影響に関する重要な知見を得て、英文誌等に多数報告した。 1)本年度、野生型マウスにおいて、TREM2が脳、単球、腹腔マクロファージに加え、肺や脂肪組織でも発現する事を見出し、またdb/db肥満・糖尿病マウスの海馬・脂肪組織(皮下・内臓)では、炎症指標(TNF-α等)と伴にTREM2の発現亢進を認めた(日本肥満学会発表, 2019)。以上より、糖尿病・肥満に伴い、脳内ミクログリアのみならず脂肪組織においてもTREM2発現が亢進し、M1/M2極性悪化と全身の慢性炎症に繋がる可能性が示唆された。 2)老化促進認知症モデルマウス(SAMP8)では、既に高脂肪食負荷後の単球・ミクログリアにおけるM1/M2極性の悪化を認めている。 3) 認知症モデルマウスである脳アミロイド血管性マウスでの検討では、認知症予防薬候補として着目しているフラボノイド・タキシフォリン投与により、脳海馬でのTREM2発現抑制を認め、それに伴い、ミクログリア活性化、炎症やアポトーシスが抑制され、認知症改善作用に繋がることを報告した(Proc Natl Acad Sci USA 2019)。本研究より、ミクログリアのTREM2(M1/M2極性)が認知症進展の起点となり、また認知症予防の為の治療標的になる事が示唆された。 4)現在、上記知見を踏まえ、TREM2欠損マウスを作製し、高脂肪食負荷実験等から肥満・糖尿病に伴う認知症進展の病態解明を進めている。さらに、細胞株(マウスミクログリアMG6、マウス線維芽細胞3T3-L1)やマウス初代細胞(腹腔Mφや脂肪組織)を用い、生活習慣病に伴う認知症の進展機序とTREM2の病態生理学的意義の解明を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、初年度の知見に立脚し、TREM2欠損マウスや老化促進認知症マウス(SAMP8)における高脂肪食負荷試験により、TREM2に焦点をあて肥満・糖尿病と認知症の関連解析を施行する。同時に、ミクログリアや脂肪細胞等の実験により上記の詳細な機序を解明する。 1)TREM2欠損マウスに対する高脂肪食負荷試験により、体組成、糖脂質代謝・インスリン抵抗性と伴に、脳内のAβ蓄積量、神経細胞死やミクログリア形質(M1/M2極性、TREM2発現、サイトカイン産生、)を分子生物学的・免疫組織学的アプローチで詳細に検討する。以上より、糖尿病・肥満に伴う単球・ミクログリア極性悪化と認知症進展におけるTREM2の役割を解明する。 2)SAMP8マウスに対する高脂肪食負荷試験では、既に体重とインスリン抵抗性の増加に伴い、海馬のTNF-α発現上昇など脳内炎症の亢進を認めており、引き続き老化・肥満に伴う単球・ミクログリア極性悪化・TREM2の変化及びその病態生理学的意義を解明する。 3)動物実験で得た知見の詳細なメカニズム解明のために、細胞株(マウスミクログリアMG6、3T3-L1脂肪細胞)・マウス初代細胞(腹腔Mφや脂肪組織)を用い、脂肪酸や炎症性刺激等の細胞実験を行う。各刺激によるM1/M2極性・TREM2や活性化シグナル機構やストレス応答能を検討し、肥満に伴う炎症進展における単球・ミクログリア極性とTREM2の役割とその分子機構を解明する。 4)以上、本研究の基礎研究で得られる知見(糖尿病・肥満に伴う認知症進展【脳内Aβクリアランス能、脳内炎症やストレス応答能】における単球・ミクログリア極性【TREM2・M1/M2極性】の病態意義)を踏まえ、申請者らが構築した糖尿病・肥満症コホートや一般住民コホートを対象としたトランスレーショナルリサーチへ発展・検証し、生活習慣病に伴う認知症予防法の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、次年度に施行予定である肥満・糖尿病モデルマウス、TREM2ノックアウトマウス、マウス・ヒト細胞を中心とした基礎研究(機能解析と病態意義の解明)推進のために、初年度の解析結果と共有できる試薬の他(抗体等)、専用培地、遺伝子操作関連試薬(ノックダウンや過剰発現試薬等)、細胞機能解析試薬(阻害剤等)、定量PCR関連試薬やマウス維持費等が必要である。 次年度使用額の使用計画としては、以下の計画に基づいて研究費を使用し次年度研究計画を推進する。1.消耗品:①マウスホルモンなど測定(ELISAキット代・血液検査外注費)②分子生物学関連試薬(ウエスタンの抗体、PCRのプローブ・キット関連試薬等)③培養関連試薬(ウシ胎仔血清、メディウム、抗生物質等)(細胞実験)④細胞機能解析関連試薬(RNA調製試薬、定量PCR関連試薬、サイトカイン測定試薬、遺伝子導入関連試薬、ノックダウン関連試薬、刺激抗体等)⑤飼育管理費(動物の購入代、管理代、餌代含む)。2.旅費:国内外の各学会での成果発表のための旅費。3.謝金:研究補助員数名の実験補助代、外国語論文の校閲。4.その他:印刷費等
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Research Products
(7 results)