2019 Fiscal Year Research-status Report
抗酸化食品成分スルフォラファンによる潰瘍性大腸炎病態改善を目指した橋渡し研究
Project/Area Number |
19K11763
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
谷中 昭典 筑波大学, 医学医療系, 教授 (80272201)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 英雄 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (00400672)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | スルフォラファン / ブロッコリースプラウト / 潰瘍性大腸炎 / 炎症性腸疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
炎症性疾患(Inflammatory Bowel Diseases: IBD)の治療に用いられる抗体薬品や免疫抑制剤は高価で重篤な副作用を伴うことから、長期的かつ安全に使用可能な低コストの薬剤の開発が望まれている。本研究では、ブロッコリースプラウト(新芽)に豊富に含まれ、抗酸化作用、抗炎症作用、並びに腸内細菌正常化作用を有するスルフォラファン(Sulforaphane; SFN)に着目し、①SFN投与がIBDの病態改善に及ぼす影響を動物実験モデルで検討し、②IBD患者を対象にSFNを投与する臨床介入試験を実施する。 2019度においては、①の動物実験を中心に以下A, Bの2点について検討を行った。 A. Dextran Sodium Sulfate (DSS)がマウス大腸炎に及ぼす影響:マウスの潰瘍性大腸炎モデル作製のために、粘膜傷害惹起物質DSSがマウス大腸に及ぼす影響について検討し、以下の成績が得られた。1) DSS投与期間の検討:3% DSS投与によるマウス大腸炎の程度は1週間投与と2週間投与で有意差が認められなかった。2) DSS1週間投与濃度の検討:予想に反して3% DSS投与時のほうが、5% DSS投与時よりも大腸炎の程度が高度であった。 B.スルフォラファン前駆体(Sulforaphane Glucosinolate: SGS)によるDSS大腸炎の予防効果の検討:SGS(2,200 ppm, あるいは4,400 ppm)投与によりDSS大腸炎マウスにおいて、大腸粘膜の炎症軽減効果が得られた。炎症軽減効果は2,200 ppm 投与時と4,400 ppm 投与時で有意差が認められなかった。現在、得られた結果の詳細を統計学的に解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第一に、本研究において動物実験に使用するスルフォラファングルコシノレート(Sulforaphane Gluco Sinolate: SGS) は、食品製造企業であるカゴメの研究所から提供を受ける予定であったが、提供を依頼した時点では、同研究所にはSGSの在庫がなく、SGSの調達までに予想以上の時間がかかってしまった。第二に、潰瘍性大腸炎患者を対象にSGS含有食品を投与する臨床介入試験について、新型コロナウィルスの感染拡大により、対象患者が外来受診を手控え、また予定された大腸内視鏡検査を延期するなどのケースが何件かみられており、次年度以降に実施予定の臨床試験の準備作業の進捗が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、動物実験における前年度の遅れを取り戻すために、SGS投与実験のスピードをあげる。第二に、潰瘍性大腸炎患者を対象にSGS含有食品を投与する臨床介入試験については、実施医療機関における倫理審査申請を速やかに行い、症例の確保に務める。第三に、新型コロナウィルスの感染が沈静化次第、国内、海外において開催される学会、研究会への出張を積極的に行い、研究情報の収集と研究成果の発表を行い、本研究成果の早期論文化に努めたい。
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Causes of Carryover |
1.基礎実験において必要なSulforaphane GlucoSinoate(SGS)の入手が予定より遅れたため、当初予定していた数の動物実験を終了することが出来なかった。その結果、その実験に使用する予定の他の試薬類の購入量が減少した。 2.研究情報の収集、及び研究成果の発表を目的として国内、及び海外で開催される複数の学会、研究会に出張を予定していたが、令和2年2月以降、それらの学会が新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて開催中止になったため、出張旅費の支出額が予定を下回ることになった。 3. 前年度未使用分の研究費は、次年度において、動物実験(追加分)の経費、及びスルフォラファンに関する臨床試験の経費として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)