2019 Fiscal Year Research-status Report
非必須脂肪酸システインによる動脈硬化進展メカニズムの解明及び再生血管に与える影響
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19K11775
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
加藤 洋一 順天堂大学, 医学部, 教授 (00231259)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 良太 順天堂大学, 医学部, 助教 (60433786)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マクロファージ / 動脈硬化 / システイン / 血管内皮細胞 / コレステロール |
Outline of Annual Research Achievements |
アミノ酸の一種であるシステインは、メラニン産生抑制やアルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドを無毒化する作用を有するため、色素沈着や二日酔いの改善などを目的とする医薬品として広く服用されている。しかし近年、過剰なシステイン摂取が糖尿病を悪化させる可能性が報告された。申請者らはin vitroの結果ながら、システインの代謝物であるシスチンが動脈硬化を増悪させる可能性を示すデータを得ている。 そこで本研究の初年度の目的は、I. 「システインやシスチンの過剰摂取が動脈硬化を悪化させる可能性及びそのメカニズム」を解明を目指すことであった。 動脈硬化の発症過程には、(A)血管内皮細胞障害、(B)血液中のLDLコレステロールが内膜に入り込み酸化(酸化LDLの産生)、(C)マクロファージが内膜中の酸化LDLを貪食し、コレステロールを貯蔵、新生内膜増殖といった複数の過程が存在する。一方、(D) HDLコレステロールはマクロファージ中のコレステロールを引き抜いて肝臓へ輸送することで抗動脈硬化作用を示す。そこでシステインがどの過程に影響を及ぼすかを検討するため、マクロファージの活性化モデルを確立した。 動脈硬化性プラーク内にある炎症性細胞ではマクロファージの数がまず増加する。マクロファージを活性化させる因子としてグラム陰性菌の細胞壁外膜を構成する成分であるリポ多糖(LPS)が知られている。LPSはマクロファージ上のスカベンジャー受容体の発現を促進して、変性LDLの取り込みを増加させることが知られているが、その情報伝達経路に関しては不明な点が多かった。そこで我々は、LPSが主にJAK-STAT経路を介してCD36とCD209の2つのスカベンジャー受容体の発現増加をもたらし、変性LDLの取り込みを増加させることによって新生内膜を増殖、動脈硬化を進展させることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マクロファージは血液中の白血球にある免疫細胞の一つだが、同時に複数ある免疫細胞に指示を与える司令塔としても作用する。顆粒球に対して体内に侵入してきた細菌への攻撃を命じたり、B細胞やT細胞に異物の情報を伝えたり、それに見合う抗体を作らせるなど、免疫細胞をコントロールしている。また、マクロファージは、酸化したLDLを貪食して内皮下で増殖することによって動脈硬化巣を形成することが知られている。 高脂肪食を摂取すると、腸管にマクロファージやT細胞などの炎症細胞が浸潤し、腸管のバリア機能が低下する。その結果、腸管内のグラム陰性菌由来のLPSが血中に移行し、全身性の炎症をもたらして動脈硬化を惹起、進展させると考えられており「メタボリックエンドトキセミア」と呼ばれている。 LPSはマクロファージ上のスカベンジャー受容体の発現を促進して、変性LDLの取り込みを増加させることが知られていたが、その情報伝達経路に関しては不明な点が多かった。 そこで我々はまず初年度のマクロファージの活性化モデル確立に際して、LPSが2つのスカベンジャー受容体であるCD36とCD209の発現増加をもたらす情報伝達経路を明らかとした。それは主にJAK-STAT経路に依存しており、JAK-STAT経路の阻害によって動脈硬化の進展を抑制できる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
過剰なシステイン摂取が糖尿病を悪化させる可能性が報告されており、申請者らはin vitroの結果ながら、システインの代謝物であるシスチンが 動脈硬化を増悪させる可能性を示すデータを得ている。 初年度に確立したLPSによるマクロファージ活性化モデルを用いて、(A)血管内皮細胞にシステイン等を添加し、死細胞染色の蛍光色素であるヨウ化プロピジウム(PI)で染色される細胞の割合をフローサイトメトリーにて測定して細胞障害を定量化、(B) ELISAを用いた酸化LDLの定量、(C)蛍光標識された酸化LDLコレステロールとシステイン等を添加した後、マクロファージ内の蛍光強度の増大をフローサイトメトリーで測定、酸化LDLの取り込みを評価、(D)蛍光標識された酸化LDLを取り込ませたマクロファージに対してHDLコレステロールとシステイン等を添加した後、マクロファージ内の蛍光強度の減少をフローサイトメトリーにて測定し、コレステロールの引き抜き能を評価する。 ②システイン、シスチン、メチオニンを加えた飲料水を、マウスに24週間自由飲水させる。摂取開始前と開始後は4週間ごとに、システイン、 シスチン、メチオニンの血中濃度を液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)で定量すると共に、糖尿病と動脈硬化の各病態を把握する。糖尿 病のモニターは、血中インスリン濃度、血糖、尿糖測定にて行い、動脈硬化の把握には、非侵襲的かつ経時的に測定できるCT造影装置および超 音波診断装置を用いた動脈硬化イメージングを行う。摂取24週間後、単離大動脈を親油性色素であるオイルレッドOで染色し、動脈硬化部位の 割合を定量的に計測する。 といった順序で推進する。必要に応じて、JAK-STAT経路への影響に関しても評価を加えつつ進めていく。
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Causes of Carryover |
1円の余剰
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Research Products
(2 results)