2022 Fiscal Year Annual Research Report
脂質代謝に着目した副腎白質ジストロフィーの病態発症機序解明とバイオマーカーの創出
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19K11777
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
濱 弘太郎 帝京大学, 薬学部, 准教授 (20534481)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 副腎白質ジストロフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの解析において見いだされたアシル基転移酵素の候補分子について、細胞膜画分を用いたin vitroの酵素活性を検証した。その結果、当該酵素は活性型の極長鎖脂肪酸をリゾリン脂質のsn-1位に導入する活性を有することが確認された。本研究で得られた結果は、極長鎖脂肪酸がリン脂質のグリセロール骨格上のsn-1位に局在するというこれまでの我々の報告と符合していた。 また、X-linked adrenoleukodystrophy(X-ALD)患者血漿から抽出した総脂質画分に対して、高速液体クロマトグラフィー-質量分析器(liquid chromatography-mass spectrometry, LC-MS)を用いた脂質メタボローム解析を行った。その結果、X-ALD患者に蓄積する極長鎖脂肪酸を含まないリン脂質分子種を見出した。X-ALDはX連鎖性劣性遺伝であり、女性保因者は殆ど発症しないものの、その血漿中には非患者由来の検体に比べて有意に極長鎖脂肪酸が蓄積する。しかし、本研究によって見出したリン脂質分子種は女性保因者の血漿中ではほぼ検出されなかった。また、一連の解析において、新規脂質の代謝過程をLC-MSを用いて解析するために、様々な脂質の安定同位体標識化合物が必要となった。そのため、共同研究により、様々な脂肪酸のアルファ位とベータ位の4つの軽水素を重水素に置換する新たな脂肪酸重水素置換法を開発した。実際に、この方法を用いて作製した酸化脂肪酸(hydroxyoctadecadienoic acid, HODE)の重水素標識体を用いて、酸化脂肪酸をリゾリン脂質に導入するアシル基転移酵素の同定に成功した。
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