2020 Fiscal Year Research-status Report
糖鎖プロファイリングによるドライマウス発生機序の解明
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19K11785
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
山越 貴水 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 老化機構研究部, 室長 (50423398)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 口腔乾燥症状 / 唾液粘性 / ムチン / O-グリカン |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者の多くが罹患する口腔乾燥症状(ドライマウス)は、唾液粘性の亢進を伴い、高齢者のQOLを低下させるだけでなく高齢者の死亡原因の第三位である誤嚥性肺炎の発症リスクを高める。このため、高齢者においてドライマウス症状が発生するメカニズム、特に老化により唾液粘度が亢進するメカニズムの解明を目的とし、老化過程における顎下腺のムチンとその糖鎖に着目した研究を行った。本年度は以下の研究結果を得た。
(1)若年者から高齢者まで幅広い年齢の顎下腺試料を用いて、アルシアンブルー(AB)染色、AB-PAS染色、Muc5b抗体染色、Muc7抗体染色を行い、酸性糖とムチンを含む粘液多糖類の大まかな量について可視化した。その結果、ヒト顎下腺では、通常、ムチンを産生する細胞以外の細胞において、老化により、主にムチンと考えられる酸性の粘液物質が新たに産生される可能性が示唆された。また、老化により中性の粘液物質は減少する可能性が示唆された。
(2)顎下腺試料からムチンを抽出し高分子糖蛋白質を分離分析できる技術(分子マトリクス電気泳動)を用いてムチンを分離し、レクチン(MAL-II, ABA)で染色したところ、ヒト顎下腺ムチンの糖鎖はcore-1型の糖鎖にシアル酸がα2-3結合で付加された構造を有することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りにほぼ進展していると判断されるため。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)様々な特殊染色を行い、出来る限り多くの病理情報を得ることで、老化によりムチンを新たに発現するようになる細胞種の特定を行う。 (2)ムチンの分析を進め、ヒト顎下腺ムチンに結合する糖鎖について、老化に伴う糖鎖構造変化の詳細を明らかにする。 (3)老化により発現変動するムチン及びその糖鎖変化と唾液粘性の関係を調べるため、唾液の曳糸性について分析する。
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Causes of Carryover |
研究費の効率的な使用により費用を節約することができた。 本年度の未使用額は唾液の曳糸性分析に掛かる費用として使用し、次年度分と合わせて研究費を適切に使用する。
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Research Products
(5 results)