2019 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌により産生される短鎖脂肪酸の骨代謝調節作用と作用機序の解明
Project/Area Number |
19K11786
|
Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
東泉 裕子 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 国立健康・栄養研究所 食品保健機能研究部, 室長 (20360092)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 短鎖脂肪酸 / 破骨細胞 / 骨粗鬆症 / 腸内細菌 / 酢酸 / 酪酸 / プロピオン酸 / TRAP活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的:研骨と炎症・免疫系はサイトカインなど多くの制御たんぱく質を共有し密接に関係していることから、骨粗鬆症の予防においても炎症・免疫系を介した骨代謝調節は重要である。難消化性でんぷんは、腸内細菌により代謝され、短鎖脂肪酸を産生する。近年、短鎖脂肪酸による局所および全身炎症・免疫系における調節作用が報告されているが、作用機序を含めたそれらの骨代謝への作用は明らかにされていない。そこで、本研究では骨粗鬆症予防における、腸内細菌により産生される短鎖脂肪酸の骨代謝への作用を明らかにするとともに、骨代謝に関連する炎症・免疫系調節における短鎖脂肪酸の新規作用メカニズムを検討することを目的とした。 研究計画:短鎖脂肪酸の破骨細胞における骨吸収の作用を検討する。マウスマクロファージ様破骨細胞前駆細胞であるRAW264.7細胞を24時間前培養した後、 RANKLを培地に添加し破骨細胞へ分化誘導した。RANKLの添加と同時に短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸:それぞれ0.05-50mM)を添加し培養し、分化誘導4日後の細胞増殖をMTSアッセイにより測定した。また、同じ条件で分化誘導および短鎖脂肪酸を添加した7日後のTRAP活性を測定し、短鎖脂肪酸の破骨細胞分化に対する作用を評価した。 試験結果:短鎖脂肪酸添加4日後のMTSアッセイにおいて、プロピオン酸および酪酸添加は細胞増殖を有意に抑制したが、酢酸添加は細胞増殖への影響は認められなかった。TRAP活性において、酢酸、プロピオン酸、並びに酪酸添加は対象群と比較し有意に低値であった。これらの結果より、酢酸、プロピオン酸、酪酸は破骨細胞への分化を抑制することが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
短鎖脂肪酸の破骨細胞における骨吸収の作用を評価するため、今年度はマウスマクロファージ様破骨細胞前駆細胞であるRAW264.7細胞を用いて検討した。短鎖脂肪酸添加4日後のMTSアッセイにおいて、プロピオン酸および酪酸50mM添加は細胞増殖を有意に抑制したが、酢酸50mM添加は細胞増殖への影響は認められなかった。TRAP活性において、酢酸、プロピオン酸、並びに酪酸添加は対象群と比較し有意に低値であった。今年度は短鎖脂肪酸の分化抑制における作用機序を検討するため、遺伝子解析の検討を予定していたが、実施していない。その理由の一つとして、実験を進めるなかで、分化誘導に対する短鎖脂肪酸の作用を詳細に検討するためには、RAW264.7細胞とあわせてマウス骨髄からのプライマリー細胞を用いての検討も必要と考えたためである。これらの状況から、2019年度の計画をおおむね達成することができたと判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度のRAW264.7細胞を用いた試験により、酢酸および酪酸は細胞増殖に影響することなく破骨細胞への分化を抑制することが示唆されたが、同時に、プライマリー細胞を用いての検討も必要と考えられた。従来の計画では、2年目は骨芽細胞における短鎖脂肪酸の骨形成への作用を検討することを予定していたが、先の理由により、短鎖脂肪酸のプライマリー細胞を用いた破骨細胞への影響を検討する必要性が示された。そのため、研究計画を変更し、2年目にも引き続きプライマリーの破骨細胞分化への短鎖脂肪酸の作用およびその作用機序について検討することとした。
|
Causes of Carryover |
RAW246.7細胞を用い、短鎖脂肪酸の骨吸収における遺伝子発現量の解析を2019年度に実施予定であったが、プライマリー細胞を用いての検討も必要と考えられたため、RAW246.7細胞における遺伝子発現量の解析を実施しなかった。そのため、当該助成金に差額が生じた。2019年度助成金の持越し分を用い、遺伝子発現量解析に関する検討をRAW246.7細胞およびプライマリー細胞を用いて2020年度に検討する予定である。
|