2020 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌により産生される短鎖脂肪酸の骨代謝調節作用と作用機序の解明
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19K11786
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
東泉 裕子 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 国立健康・栄養研究所 食品保健機能研究部, 室長 (20360092)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 短鎖脂肪酸 / 骨芽細胞 / 骨粗鬆症 / 酢酸 / 酪酸 / プロピオン酸 / 腸内細菌 / ALP活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的:骨と炎症・免疫系はサイトカインなど多くの制御たんぱく質を共有し密接に関係していることから、骨粗鬆症の予防においても炎症・免疫系を介した骨代謝調節は重要である。近年、短鎖脂肪酸による局所および全身炎症・免疫系における調節作用が報告されているが、作用機序を含めたそれらの骨代謝への作用は明らかにされていない。そこで、本研究では骨粗鬆症予防における、腸内細菌により産生される短鎖脂肪酸の骨代謝への作用を明らかにするとともに、骨代謝に関連する炎症・免疫系調節における短鎖脂肪酸の新規作用メカニズムを検討することを目的とした。令和2年度は短鎖脂肪酸の骨芽細胞における骨形成への作用を検討した。 研究計画:マウス頭蓋冠由来細胞MC3T3-E1細胞を24時間培養した後、短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸:それぞれ0.05-50mM)を添加、あるいはポジティブコントロールとして、L(+)-アスコルビン酸及びβ-グリセロリン酸を添加し、骨芽細胞分化および骨芽細胞形成への短鎖脂肪酸の作用を検討した。短鎖脂肪酸を添加し、細胞増殖をMTSアッセイにより測定した。短鎖脂肪酸の骨形成関連遺伝子発現に対する作用をqRT-PCR法により評価した。また、短鎖脂肪酸の骨芽細胞分化に対する作用をアルカリフォスファターゼ(ALP)染色により検討した。 試験結果:MTSアッセイにおいて、50mM酢酸、酪酸及びプロピオン酸は細胞増殖を有意に抑制した。短鎖脂肪酸添加2日後のALP遺伝子発現量において、短鎖脂肪酸添加群は対象群と比較し高値であった。ALP染色において、酢酸添加は対象群と比較しALP陽性細胞の増加傾向が認められた。これらの結果より、酢酸は骨芽細胞への分化を促進することにより骨形成に作用する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
短鎖脂肪酸の骨芽細胞分化および形成への作用を評価するため、今年度はマウス頭蓋冠由来細胞MC3T3-E1細胞を用いて検討した。短鎖脂肪酸添加3日後のMTSアッセイにおいて、50mM酢酸、酪酸及びプロピオン酸は細胞増殖を有意に抑制した。短鎖脂肪酸添加2日後におけるALP遺伝子発現量への作用を検討したところ、短鎖脂肪酸添加群は対象群と比較し高値であった。ALP染色において、酢酸添加は対象群と比較しALP陽性細胞の増加傾向が認められた。 今年度は、昨年度検討した結果から、短鎖脂肪酸の破骨細胞の分化への作用をマウス骨髄からのプライマリー細胞を用いて検討する計画であったが、コロナ感染症による緊急事態宣言等の影響によりプライマリー細胞を用いることが困難であったため、当初の予定通りマウス頭蓋冠由来細胞MC3T3-E1細胞のセルラインを用いて検討した。短鎖脂肪酸の骨芽細胞分化等への作用については、上記の研究成果を得られたことから、おおむね計画通り達成することができたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度および令和2年度において、マウスマクロファージ様破骨細胞前駆細胞であるRAW264.7細胞及びマウス頭蓋冠由来細胞MC3T3-E1細胞を用いて、短鎖脂肪酸の破骨細胞および骨芽細胞への作用を検討した。その結果、短鎖脂肪酸の破骨細胞における骨吸収抑制及び骨芽細胞における分化促進作用が示唆された。作用機序では、骨芽細胞における酢酸の分化関連遺伝子発現の促進作用も示唆された。これらの研究結果から、計画通りの研究成果が得られていると判断し、令和3年度は閉経後骨粗鬆症モデルマウスにおける短鎖脂肪酸の骨密度低下に対する作用を検討するとともに、骨代謝および炎症・免疫系調節における短鎖脂肪酸の新規作用メカニズムを検討することとした。ただし、コロナ感染症まん延により、計画通りに研究を実施することが困難な状況になることも十分考えられることから、初年度および令和2年度に実施した細胞を用いての作用機序解析に関する研究も考慮に入れ、臨機応変に研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
令和2年度は研究計画通り概ね順調に実施できたことから、予算も計画通り執行できた。執行状況の最終確認ができなかったことから、消費税等による差額が28円生じた。
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