2019 Fiscal Year Research-status Report
がん関連疲労に対する糖類の有用性とがん増殖能への影響
Project/Area Number |
19K11800
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
吉澤 一巳 東京理科大学, 薬学部薬学科, 准教授 (00711532)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | シスプラチン / 疲労様行動 / グルコース |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、抗がん剤により誘発される疲労様行動に対する栄養療法の有用性を検討することである。実験には C57BL/6N 雄性マウスを用い、シスプラチン(CDDP; 10 mg/kg)を腹腔内投与することで抗がん剤誘発副作用モデルマウスを作製した。このモデルマウスに対して、糖質主体栄養剤投与群、脂質主体栄養剤投与群、スクロース投与群ならびにオリブ油投与群を設定し、トレッドミルを用いて疲労の評価を試みた。その結果、CDDP 誘発副作用モデルマウスは、疲労様行動を呈したが、糖質主体栄養剤およびスクロース投与群ではその疲労様行動が予防できた。一方、脂質主体栄養剤およびオリブ油投与群では疲労様行動の予防作用は認められなかった。以上の結果から、CDDP による低栄養は、肝グリコーゲンを消費して恒常性を保ち、その代償として持久力の低下、すなわち疲労を呈するものと考えられた。そのため、肝グリコーゲン合成への寄与が高い糖質を摂取することが、疲労の改善に繋がったものと推察された。 そこで次の研究として、スクロースを構成する単糖であるグルコースおよびフルクトースを用いて同様の検討を行った。まず、スクロースを単糖へ分解する酵素を阻害するボグリボースを併用したところ、スクロースによる CDDP 誘発疲労様行動の予防作用は阻害されたことから、スクロースによる疲労予防はグルコースあるいはフルクトースによるものであった。さらに検討を進めたところ、CDDP 誘発疲労様行動の予防作用はフルクトース投与群よりもグルコース投与群の方がより顕著であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シスプラチンを用いて低栄養に伴う疲労様行動を評価し、脂質よりも糖質の投与が疲労予防に有益であることが明らかとなった。引き続き、様々な糖類の影響について検討を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、トレハロースやラフィノースなどの糖類についても検討していく予定である。また、この疲労様行動には肝グリコーゲン量の減少が関与するが、炎症やフリーラジカル、腸内細菌叢などのグリコーゲン以外のバイオマーカーについても検索する予定である。
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